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デレク・ベイリー 『guitar, drums 'n' bass』

さぁ、少しだけフリー・ジャズを聴いてみようか、っていう気持ちになっている。
といっても、なかなかに奥深い世界だし、聴き慣れていないととっつきも悪いので、少しづつ、恐る恐る。

で、まずはデレク・ベイリー。
僕はギターを弾くので、とりあえず取っ掛かりとしてはいいだろうということで、Apple Musicでデレク・ベイリーのカタログをチェックしている。
今日ダウンロードして聴いていたのがこのアルバム。
『guitar, drums 'n' bass』(1996)

デレク・ベイリーは1930年生まれだから、レコーディング当時(1995年)65歳か。

サブスクの残念なところ。
音源はあっても、クレジットなどの関連情報が全くないので自分で調べないといけないところだ。
(まぁ、サブスクに限らず輸入盤のCDやレコードでもアルバム・ジャケットに印字されている以上の情報は無いのが普通なので、どれだけ国内版の解説が親切なのかって話なんだけど)

ということでネットで調べたら英語版のWikipediaに記事があった。

なんと、デレク・ベイリー御大、海賊ラジオから流れてきた当時流行のジャングルやドラムンベースを聴いて衝撃を受けて、早速その音楽に合わせてインプロヴァイズの練習をしていたそうだ。
それがレコーディングに入る2年前の1993年の話、ベイリー63才。
すごくないですか? いつまでも若い心で音楽に向かう好奇心。

で、手応えを感じたのかベイリーは、アプローチしていたジョン・ゾーン(そうか、そういう時代か)に連絡して「アルバムを録音しよう」となったらしい。
(その前には、ビル・ラズウェル(B)や吉田達也のノイズプロジェクト "Ruins"、トニー・ウィリアムス(Dr)とデモセッションも録っていたようだ。この音源はリリースされていないのかな?)
そして、レコーディングセッションはバーミンガムのドラムンベースDJのDJ Ninjがトラックを担当し、ベイリーがギターを重ねた。

とにかく、今聴いても新しい。
というか、後にも先にもこうしたアプローチはされていないんじゃないだろうか?僕が知らないだけかもしれないが。

そして、この試みはどうだろう?
一聴すると、刺激的で新しい試みだとは思うが、アルバム1枚通して聴くとちょっと飽きが来るというか、そういうところはある。
あくまでもベイリーがDJの作ったドラムンベースのトラックに反応してインプロヴァイズしているのだけど、
さらにそのギタープレイに反応してのリターンがないところがどうしてもあるので、展開が単調にならざるを得ないのではないだろうか。
やっぱりDJ側もベイリーのプレイに反応して、ブレイクやオカズ、エフェクトをインサートするなどの、そういうインタラクティブな応酬が欲しい気はする。
おそらくそうしたプリセットした音源とのインプロヴァイズの限界を感じて、その後こうしたアプローチは無くなったのかもしれないのでは、とも思った。

とはいえ、それでもこの約30年前のチャレンジは、全くもって刺激的なので、聴いて損はない。
ベイリーのアプローチは多岐に渡っていて、よくもまぁアドリブで、かつ旧来のギターイディオムをいったん全て捨て去ったところで、聴いたことのない音を紡ぎ出すそのテクニックとイマジネーションはとても真似できないなと思う。
僕ならおそらく1分演ってみただけでも、冷や汗ダラダラで固まってしまうんじゃないだろうか。

うむ、フリー・ジャズは色んな意味で恐ろしい。
侮るべからず。

では、聴いて下さい(笑)


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