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警告!この記事を読んではいけない85「銃」について51<戦闘機の搭載機銃8>

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アメリカの戦闘機、何がスゴかったか 1

それは機銃の搭載方法です。何処の国も、こんな考え方で機銃を設置した国はありません。これはアメリカ独自の方法です。そして、合理性を極限まで突き詰めた結果、アメリカ人はこういう結論に至ったのです。そしてそうして作られた戦闘機はとうとうゼロ戦を凌駕しました。結果として正しい決断だったのです。

アメリカの機銃は、特殊な用途の物を除くと、殆どの場合、ブローニングМ2重機関銃だったようです。この機銃は原形銃が第1次大戦末期に開発されたという大変古い銃ですが、この機銃、現在でも使われているという非常に信頼性の高い銃です。口径は12.7ミリ、50口径です。

そしてこの信頼性の高い機銃を、戦闘機の搭載機銃としても採用しました。ただでさえ工業立国で、生産性の優れたアメリカです。銃そのものの供給も、弾丸の供給も、全てが統一されているためどこに派遣されてもどこからの供給でも、同じ製品を受け取る事が出来たのです。ここに、アメリカ人の合理性の凄さが見て取れます。

そしてアメリカ人は、最も簡単な搭載方法を選びました。主翼内発射です。日本やドイツは、1丁当たりの威力を増そうとして、20ミリ砲や30ミリ砲を搭載しましたが、アメリカ人はそんな事はしませんでした。相手はゼロ戦です。ゼロ戦さえ落とせれば、その他に用はなかったのです。

そしてゼロ戦を落とすには、どんな機銃が必要だったのでしょうか。装甲が極めて軽微なゼロ戦です。20ミリ砲など必要ありません。国内で軍用に普及している12.7ミリ機銃、絶大な信頼性のブローニングМ2重機関銃、これで十分だったのです。

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アメリカの戦闘機、何がスゴかったか 2

そして、アメリカ人の合理性が最も端的に現れていたのが、搭載機銃の発射方向です。つまり搭載の仕方にアメリカ独特の工夫がなされていたのです!まず、12.7ミリ機銃の弾丸、これが数発当たれば、装甲の薄いゼロ戦を火だるまにすることができました。

問題は、どうやってゼロ戦に当てるかです。エンジンだけは1000馬力級と普通の域を出ないゼロ戦でしたが、徹底した軽量化によって、信じられない運動性能を獲得していたゼロ戦です。その上何度もお話したように、高速で機動する戦闘機から、高速で機動する戦闘機に向かって機銃を撃ったところで、タマは真っすぐには飛びませんから、当たるはずもないんです。

それを当てようというのですから、至難の業になります。アメリカ人は工夫しました。それは次のようでした。

1 タマが真っすぐ飛ばないなら、精密に狙いをつけても無駄である。そもそも、精密に狙いを付けられるような熟練パイロットは殆どいない。そして次から次へと供給される、新米パイロットを戦闘機に載せて、身体が引きちぎれるような機動をしながら狙いを付けるなど、出来るはずもない。

2 だったらこう考えるとよい。狙ってもタマは真っすぐ飛ばない。そもそも狙いをつけること自体が至難。ならば、狙わなくてもよい方法を模索すべきである。なんとなく敵機のいる方向に、なんとなくタマをバラまけば、タマがたくさんならば、どれかは当るだろう。この考え方でいこう。

☆ この考え方こそが、アメリカの戦闘機に勝利をもたらしたのです。

3 つまりこういう事です。

狙わなくても当たりゃいいんだ、当たりゃあ!

そして「狙わなくても当たる方法」を考え出したのです!それは、次のようにしんたんです!

1 可能な限り多くのタマを、なんとなく敵機のいる方向にばらまく。そのために、可能な限り多くの機銃を搭載して、同時に発射する。

2 多くの機銃と言っても、重量やかさばり具合に限界がある。それも搭載機銃はМ2重機関銃。結構大きい。だから片翼に3丁ずつが限界。

3 左右合計6丁のМ2を同時に発射する。単純に発射するのではなく、次のようにする。

4 片翼毎に、3丁の各銃の発射方向を、扇状に広げて、より広範囲にタマを同時にばらまく!

特に特徴的だったのはこの4です!この考え方は、素晴らしい効果を生み出しました。これ、イギリスのスピットファイアの考え方と真逆です。スピットファイアは、8丁もの7.7ミリ銃を、弾道がある1点に集中するように配置していました。これだと、弾が集中した点にいた敵機だけには、大量のタマを浴びせられましたが、その1点から外れるともう、敵機を撃ち落とせませんでした。

ところがアメリカの方法ならば、タマは四方八方に散らばっていきます。まるで鳥撃ち散弾銃のようです。そして1発1発は12.7ミリのタマです。その中の数発が当たれば、ゼロ戦は火だるまになります。操縦や射撃の未熟なパイロットたちでも、これなら充分にゼロ戦と戦えます。その上、ヘルキャットは、まるで戦車のような重装甲を備えた戦闘機でした。ゼロ戦の7.7ミリ機銃に撃たれたくらいでは、殆ど撃墜されなかったのです。

「撃たれても死なない」「撃たれても落ちない」。これは、未熟なパイロットたちに、絶大な安心感をもたらしました。つまりヘルキャットのパイロットたちは、安心してゼロ戦との格闘戦に、突入して行けたのです。

こうして、ヘルキャットは、太平洋戦争の最強戦闘機となったのでした。実は、書類上のスペックでは、ヘルキャットより早く前線に投入されたF4Uコルセアの方が、優れている部分もありました。が、パイロットたちは口を揃えて「ヘルキャットがいい!」と言ったのでした。様々な理由がありますが、大きかった理由は「視界がよい」と言う事だったようです。

今日はここまでにします。アメリカ人の、大きな国力を背景にした徹底した合理主義。これが、ゼロ戦に勝利した要因でした。

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