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警告!この記事を読んではいけない82「銃」について48<戦闘機の搭載機銃>5

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前回の記事で、日本の戦闘機、ゼロ戦の搭載機銃のお話をしました。そしてゼロ戦に限らず、日本の戦闘機の機銃は、主翼の他にカウルに2丁搭載され発射される事をお話ししました。カウル機銃は主翼機銃に比べ、射撃手からの位置が近いため、手持ち銃に近い感覚で撃つことができ、この「感覚的に狙いやすい」という事が、パイロットたちには好評でした。日本は、第2次大戦の最後まで、このカウル機銃を、作り続けました。

今回はいよいよドイツ空軍です。

ドイツ空軍、メッサーシュミットBF107

言わずと知れたメッサーシュミットです。メッサーに限らず、ドイツ軍は、国力こそアメリカには敵わないものの、信じがたい新兵器を、次々と世に送り出しました。Uボート、V2号ロケット、列車砲、無線誘導式滑空爆弾、などなどですが、飛行機メーカー、メッサーシュミットは、BF262という世界初のジェット戦闘機を実戦に送り出しました。

科学技術に関しては、どの国よりも先進的であったドイツです。メッサーも、大戦中はBF109という傑作レシプロ戦闘機を量産して制空権の確保に努めたのでした。

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BF109の搭載機銃位置

初期の109の搭載機銃は、日本と同じ、エンジンカウルだけに付けられていました。実は、109は、もともと主翼内に機銃を搭載する予定はなかったのです。理由は明快で、109は第二次大戦期の戦闘機としては、世界中で最も軽量に作られていました。機体の大きさに比して、薄く小さい主翼が設計されていたのです。

なので、主翼内には、機銃どころか燃料タンクすらない機体でした。全体的重量と比して主翼を重くするわけにはいかなかったのです。こんな小さくて薄い主翼に機銃など搭載すれば、主翼が重すぎて運動性に支障が出てしまいます。燃料タンクも胴体内だけなので、大戦末期には航続距離の短さが問題になりました。

技術的先進国であるはずのドイツが、戦闘機の搭載機銃がカウル上面の2丁だけとはやや先進的でないです。実は109には、当初から機銃の搭載方法に革新的なアイディアがありました。それは「モーターカノン」と呼ばれるプロペラ軸内発射の機銃です。

プロペラ軸内発射とは、どういう事なのでしょうか?

ドイツ独自の搭載機関砲「モーターカノン」

これは、109の後期型のF型で、遂に実現した理想の搭載機銃位置です。機銃、というか、この場合は20ミリ砲でしたから、搭載機関砲と呼ぶのが正しいです。109が世に出るその時に搭載する予定でしたが、この機関砲は、振動などの問題の解決が遅れたため、F型からやっと搭載されました。

「モーターカノン」とは、いったいどんな機関砲なのでしょうか。それは、驚くべきことに、機首にあるエンジン、第二次大戦のレシプロ機ですから、エンジンは当然レシプロエンジン。つまりピストンの往復によってクランクシャフトを回し、その回転力でプロペラを回して推進力を得るというタイプのエンジンでした。

クランクシャフトはエンジンの中央で回っている棒状の部品です。軸として回転はしますが回転以外の動きはありません。外から見ると止まっているように見えます。そこでドイツ人は考えました。この軸の中心部分を空洞にするのです。すると、エンジンは変わらず回転できますが、中心軸は空洞ですから、ここに機関砲の銃身を入れてしまおうというのです。

どうしてこんな、七面倒くさい事をしたのでしょうか。それは、実現すれば革新的に機関砲の命中率を上げる事ができるからです。以前の記事で何度もお話した通り、戦闘機の空中戦で、高速で機動する戦闘機に、機銃や機関砲を撃っても、真っすぐ飛ばないので命中するはずもない、というお話をしました。

なので、各国の技術者は、それでも命中させようとして、血眼になって努力したのです。その結果が「モーターカノン」という驚天動地の発想でした。プロペラ軸の中を空洞にして、そこに機関砲の銃身を入れ込むとどんな利点があるのでしょう。

日本のゼロ戦は「狙いやすく」するために、複雑な機構を投入してもカウル発射にこだわりました。ドイツ人はモーターカノンにこだわったのでした。発射点がプロペラ軸内という事は、パイロットの視点から見て、目の前中央から、機関砲弾を発射できるという事です。目の前中央から発射するワケですから、カウル発射に比べても、さらに「狙いやすい」状態を生み出すことができるのです。

しかし技術的問題が多く発生し、109に最初からこれを搭載する事はできませんでした。ようやく問題が解決し、搭載が実現したのはF型からだったのです。こうして109は、プロペラ軸内発射のモーターカノンと、カウル発射の(後期は)13ミリ機銃2丁の合計3丁で、強力武装の戦闘機となったのです。

アニメ映画「スカイクロラ」で、敵側エースパイロットの搭乗するレシプロ戦闘機「スカイリイ」で、はっきりと描かれています。これ、物凄い威力のモーターカノンでした。ああ、撃ってみたい(笑)

カウル発射は、いくつかの国で実現していましたが、このモーターカノンを実現した国はドイツだけでした。いろいろな意味で、やはりドイツはスゴイ国だったと思います。モーターカノンを実現した技術者の執念、本当に恐れ入ります。

これがドイツ空軍の戦闘機のお国柄です。

では次回は、戦闘機のお国柄をご紹介する最後の記事になります。アメリカです。いやあ、アメリカはアメリカで、それはそれはスゴイ発想の戦闘機を作ったものです。搭載機銃についても、それはそれは凄いです。何がスゴイかというと、その合理性です。さすがは合理性の国、アメリカですね。

アメリカ人はアメリカ人で、それこそ血の滲むような努力と工夫を重ねて、物凄い戦闘機を作ったのです。理由は明快です。「ゼロ戦に勝てる戦闘機を作りたいっ!」の一心だったのです。開戦当初、どうしてもゼロ戦に勝てなかったアメリカの戦闘機たちでした。司令部から「ゼロ戦を見たら逃げよ」「交戦してはいけない」という命令まで出ちゃってたんですから。ゼロ戦に対する劣等感は、物凄いレベルだったに違いありません。

でも、そこで引き下がるようなアメリカ人ではありませんでした。どうにかしてゼロ戦を超える戦闘機を作ろう作ろうとして、そしてとうとう本当に作ってしまったんです。搭載機銃についてもそれはそれは合理性の塊でした。次回、それをお話ししたいと思います。

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