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2022年5月8日(日)フォニックス・マリンバ・オーケストラⅨ演奏会 <木の命を感じるような>心に刺さる音楽の演奏会 2

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<木の命を感じるような>とは

今回は「柔らかくはない、木でありながら硬質、木の命と鋭さを感じさせるような」演奏会でした。

木は生物です。生きています。動物のように声は発しませんし自らの意思で動き回る事はしません。でもちゃんと生きていて、呼吸し、水を飲み、成長して天高く幹を伸ばし、葉を茂らせ、花を咲かせます。木は、多くの動物や昆虫の住処となり、糧となり、地球の生態系の基礎をなしています。

木は成長すると切り倒されて、人間の活動の道具となったり材料となったりします。私たちが住んでいる住居にも多くの木材が使われており、また、私たち音楽家が使っている楽器にも、それはそれはたくさんの種類の木が使われています。

私たち人間が生きるために、木は必要ですが、必要などと言う乾いた表現ではなく、人間は古来から木と共にあり、木のおかげで生活をさせてもらってきています。それは現在もそうであり、将来もそうあり続けるでしょう。木は私たち人間が生きてゆくための欠くべからざる伴侶です。

私たちは木のおかげで、文化芸術を育むこともできており、音楽もまた木のおかげで今日まで発展してきました。木は多くの楽器の材料です。職人による精密な加工が施される場合が多くありますが、中には、木そのものを切り出しただけの、殆ど無加工な「木そのもの」というべき楽器もあります。

マリンバは、そうした「木そのもの」の楽器の代表でしょう。振動体である音板も、それを発音させるマレットも、ほぼ「木そのもの」です。これほどまで純粋な「木の楽器」は、他にないでしょう。当然ですがマリンバからは「木の音」が出ます。

マリンバオーケストラ・・たくさんの「木の音」が溢れる空間になります。前回の演奏会は、<森の中にいるような心地よい演奏会>と感じました。柔らかい印象だったのです。今回は、同じ「木の音」でも印象が違いました。<木の命を感じるような心に刺さる演奏会>でした。

<木の命を感じるような>とは、音板一つ一つに、木の命が戻ってきて音板一つ一つがまるで生き物のように動き、空を飛び、演奏会場を跳ね回っているような、そして飛び交う音が、聴衆という生物の心を貫いて飛び去って行くかのような、命溢れる躍動感、演奏会場全体が躍動感に包まれるような、そんな不思議な感覚を味わうことの出来た演奏会でした。

木の命はすでに失われているはずなのに、演奏会の時間だけは、生きていた時の木の魂がそこに戻り、その魂は、喜んでいました。音という別の生命を得たことで、その瞬間だけは命を取り戻せたかのように、喜んで会場を跳ね回っているように感じました。

この夜の演奏会は、そのような感覚になる、素晴らしい演奏会でした。

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ひとつひとつの曲が生きていた

ここから先は、この夜に演奏された曲を一つ一つ感想表現したいです。

1 歌劇<ルスラン&リュドミラ>序曲

この最初の曲の最初の音から、衝撃的でした。圧倒的圧力感があるものの、それがちっとも不快でなく、心地よい圧力感でした。まさしく「木の命」の圧力感だったのです。演奏者たちの超絶の技量と相まって、それぞれの楽器からまばゆい光がほとばしるようでした。

2 フィンランディア賛歌

ああ、この曲の演奏は、言葉にならないくらい素晴らしかったです。1曲目の音は「輝かしい躍動感」を感じさせましたが、この2曲目は「温かく静謐な輝き」と言いましょうか、寒い冬の夜、暖炉の火にあたりつつ、蝋燭の光で本を読んでいるような、柔らかく温かい光と音を感じました。

この時間と空間にいつまでもいたい、と思わせるような素晴らしさでした。

3 シンフォニアМ「神々の声を聴け」

いやあ、驚きました!素晴らしい曲です!美しい曲です!作者の新実先生の天才を感じました。マリンバという楽器からどういう音が出て、演奏会場ではどのように共鳴しあって、結果全体的にはどんな音の世界が繰り広げられるのか、全て把握した上での作品ですね。この上なく美しい音世界でした。

この曲は、この夜の演奏曲目の中で最も「木の命」を感じさせる曲でした。私の耳には、この曲は、木の導管と師管を流れる水分と栄養分が、ざざ~~っという音を立てているように感じました。まるで木の内部構造の中にいるような感覚になりました。


今日はここまでにします。この演奏会の感想はとても一つ二つの記事で収まりません💦次回は次の曲「モルダウ」の感想から始めたいと思います。

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