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血は争えない(短編作品)


 帰り道.。娘に聞いた。
「今日乗った、メリーゴーランドとジェットコースターどっちがよかった。」
「ジェットコースター」娘は言った。
「えっ、ジェットコースーター!」
「うん。」
まさかの絶叫マシーン。
女の子は強いなぁ。改めてそう思う。
今日、乗ったジェットコースターは結構怖かった。これが、子供向けでいいのかと疑うほどに。
僕たち親子と同様に、前に男の子連れの親子がいた。娘の佳奈と同い年ぐらいの子だ。その子は、最初のうちは楽しそう叫んでいた。が、急カーブ、急降下を繰り広げられるうちに、安全バーを強く握りしめ、叫ばなくなっていた。
「佳奈は、きっとパパより強い子になるよ」
突然そんなことを、口に出してしまう・・・・・・。

 結婚して、娘ができるなんて思ってもいなかった。生涯独身でいるんだろうなぁと大学生くらいで認識していた。
極度の人見知りで、人と話すのが大の苦手。フェイストゥフェイスが嫌いな言葉であり、嫌いな行動だ。
唯一しっかりと向き合うことができるのは、パソコンかスマホぐらいである。
だから、人と話すときは、目を逸らすか下を向く。酷いときは、体ごと逸らす。もっと酷いときは、テーブルの向かいに座らず、対角線上に座ってしまったこともある。それを、顧客にやってしまったことがある。
その顧客が今の妻だ。
「臼井さん、なんでいつも逸らしちゃうんですかぁ?」そう言いながら、僕の正面に座り、顔を近づけてきたのをよく覚えている。絶叫だった。
だけど、その後すぐに笑った顔が僕を和ませた。それから、一緒に仕事をするうちにゴールイン。引っ張ってくれる強い女性だ。佳奈もきっとその血を受け継いでいる。僕のダメな部分は、引き継いでいなくて、安心するが、
ちょっと残念な気もする。
「パパ、歩くの遅い」
娘が手を引っ張る。
「あぁ、ごめんごめん。」
いかんいかん。まだ娘をリードする父親でないといけない。
娘を抱き抱え、車まで走る。近づいた顔、笑った顔がやっぱり妻に似ていて誇らしい。

血は争えない・・・・・・子どもが父母から気質・性向を受け継いでいること。

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