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好きになったらね(短編作品)



 喫茶店で友達と話していた。そしたら、私の好きな人の話題になった。息が詰まった。

内容はショッキングだった。好きな人に彼女がいるとかではない(それは、よかった)。しかし、悪口だった。私は居ても立っても居られず、用事を思い出したと
ベタな嘘をつき、店から飛び出していた。

 好きになった人の悪口って自分が否定されるのと同じなんだ・・・・・・。
俯いて歩いている、コロコロと空き缶が転がってくる。
あ、私の好きな缶コーヒー、レインボーマウンテン。
そう思った矢先、大型トラックに轢かれ、パキョン!と音を立て、
土手藪へ消えていった。見るも無惨な瞬間だった。
 泣きっ面に蜂。
もう、歩きたくもなくなっていた。消えていった方向へ目をやると小川があった。あそこで泣こう。そう思った。
 小川は西日に照らされ、水面がキラキラと輝いている。その美しいせせらぎに身を任せていたら、泣けなかった。
小川が涙をさらってくれたのかなぁとエモい気持ちになっていると、7年前に亡くなった、祖母の言葉が甦ってきた
「好きになったらねぇ 美しくするのも貴女だし、醜くするのも貴女なんだよ・・・・・」
その言葉を思い出してはっとした。そうかぁ そうなのかぁ。
 他人がなんと言おうと関係ない。好きになる理由もわからない。まだ、告白もしていないし、付き合うのかもわからない。
でも、一つ言えるのは、私次第なのだ。私にかかっている。彼が醜いなら、私が美しくなるように助けることだってできる。おばあちゃん、ありがとう!
これから、始まる。私たちの物語。
私は流れるように西日に向かって歩き出した。

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