『異端反駁』第5巻 第30章(エイレナイオス)

そうなっており、そしてこの数字[黙示録13:18]は最も認められ古代のものである[黙示録の]写本群からも見つかっており、またヨハネを顔と顔を合わせて見た人たちも[それについて]証言を持っているからには、そして理性で考えても、このように結論できる。つまり獣の名の数字は、[名が]含む諸々の文字をギリシア語の計算方法に従えば、六百六十六になるのである。これは、十の個数が百の[個数]に等しく、百の個数が一単位の[個数]に等しいということである。[(ラテン訳補遺:)…というのも表示された六という数字が同様に貫かれているのは、その完全な堕落が繰り返されることを表現している。つまりそれは始めと、中間の期間と、終わりにあるのである。]私は誰かがどのようにして通例表現に従い損なって、その名の中間の数字を五十引くことによって欠損させたのかわからない。それでそこでは六個の十の代わりに一個の[十]しかない[訳注:つまり616]。[ラテン語訳補足:これが起こったのは写字生の間違いのためと思う。それはよく起こることだし、また、数字も文字によって表されるものであるから。それで、六十という数字を表現するギリシア文字[訳注:クシー ξ ]は容易にギリシア語のイオタ[訳注:ι ... (=10)]という文字に広がってしまうのである。] ある者たちはこの読みを検証することなく受け入れてしまった。ある者たちはその単純さのせいで、彼ら自身の責任だが、「一つの十」を表現するこの数字[616]を使っている。またある者たちは、彼らの未熟さのために誤りと疑わしさを含んでいるはずのその数字を敢えて探究してきたのである。さて、単純さのせいであって、悪意なくこれを為した者たちに関しては、神によって彼らに赦しが与えられるであろうと考えても良いだろう。しかし虚栄心のために疑わしい数字を含んだ名が受け入れられるべきだと強く主張し、彼ら自身によって思いつかれたこの名前を、来たるべき人物だと断言する者たちについては、そのような人々は、損害無く済むことはないであろう。彼らは自分自身と、彼らを信頼した者たちの両方を誤りへと導いたのだから。さて、まず、真理からそれること、そしてそうでないことをそうだと思うことは損害であり、また、聖句に何かを加えたり引いたりする者には軽くない刑罰があることになっているのであり[黙示録 22:19]、そのもとでそのような人は必ず堕落するのである。さらに、もう一つの、決して取るに足らぬことでない危険が、反キリストの名を知っていると誤って思っている者たちに襲い掛かることになる。というのもそれらの人々が[十の位は]一だと思っていると、他方[の数字]を持っていたその者が来た時に、彼らは、彼が予期していた人物、つまり対抗して警戒しなくてはならない人物ではないと思って、彼によって容易に連れ去られるだろう。


それゆえこれらの人々は、[本当はどういう状態であるかを]学び、そして正しい名の数字に戻るべきである。彼らが偽預言者たちに数えられることのないためである。しかし聖句によって宣言された確かな数字、六百六十六を知っているなら、まずは王国の十への分割を待つべきである。次に、それらの王たちが治めており、諸々のことが整い始め、彼らの王国を発展させるときに、王国を自分自身のものと主張する者が来ることになっており、わたしたちが語ってきたような人々を恐怖させることになっており、また先述の数字を名に含んでいるが、その人物が真に「荒らす憎むべき者」であると知るべきである。これもまた、かの使徒が確証している。”彼らが「平和だ、安全だ」と言っている時に、突如として崩壊が彼らに臨むのである。”[第一テサロニケ 5:3]そしてエレミヤは彼の突然の到来を示しだしただけでなく、彼がどの部族から来るかも、以下のように言って示している。”我らは走る馬たちの声をダンから聞く。全地は彼の疾走する馬たちの息遣いの声によって動かされる。彼はまた、来て、地と、そこに満ちるものと、また都市と、そこに住む者たちをむさぼる。”[エレミヤ 8:16] これも、この部族が『黙示録』において他の救われる者たちと共に数えられていない理由である。[黙示録 7:5-8]


それゆえ、預言の成就を待つことが、推測を為して今ある諸々の名自体について思案することよりも、確実であり、危険が少ないことである。多くの名が、言及された数字を保持することが見出され得るためである。それで同じ疑問が結局のところ解決されずに残るのである。というのも、この数字を保持することがわかる多くの名があるのなら、来たるべき人物が持っているのはそのうちのどれなのかが問われるであろう。

[以下ラテン語訳より]

こう言っているのは、神の恐れと真理への熱心のためであって、その名のその数字を含む諸々の名について[候補を]不足しているためではない。というのも、「エウァンタス(ΕΥΑΝΘΑΣ)」は必要とされる数字を含んでいる[Ε(5)+Υ(400)+Α(1)+Ν(50)+Θ(9)+Α(1)+Σ(200)=666]が、私はそれに関して何らの主張もない[訳注:"evanthes"のこと?]。それから「ラテイノス(ΛΑΤΕΙΝΟΣ)」も六百六十六を持っている[Λ(30)+Α(1)+Τ(300)+Ε(5)+Ι(10)+Ν(50)+Ο(70)+Σ(200)=666]。これは[ダニエルによって見られた四つの王国の内の]最後の王国の名であるから、とてもありそうなものだ。というのもラテン人たちは現在において統治権を持っているのである。しかしながら、私はこれを豪語は全くしない。「テイタン(ΤΕΙΤΑΝ[ラテン語:Titan])」も、[「TEITAN」は第一音節がギリシア語の二つの母音、εとιで書かれている]私たちの間で見られる全ての名の[解釈の]うちでは、やや信頼に足る[Τ(300)+Ε(5)+Ι(10)+Τ(300)+Α(1)+Ν(50)=666]。というのもそれはそれ自身のうちに預言された数字を持ち、六文字で構成され、それぞれの音節が三文字を含むのである。そして古い[単語]であり、普通の使用とかけ離れているのである。というのも、我らの王たちのうちにはこのティタンという名を持つ者は見出されないし、ギリシア人や異邦人たちの間で公にこの呼び名で崇拝されている偶像もないのである。多くの人々の間でも、この名は神的なものと評価されており、今[統治権を]保持する者たちによって太陽でさえ「ティタン」と呼ばれているほどである。この単語も、報復という表現と、課している刑罰を含んでいる["Titan"の語源の一説として"tisis(報復)"とする説があった]。彼(反キリスト)は悪しくも諸々の業に報復するかのようなふりをするためである。これに加えて、それは古代の名であり、信頼に足るものであり、王家の尊厳を持ち、さらに、ある専制者に帰される名である。それで、このティタンという名はそれを勧めるための多くの者を持っているので、強い程度の蓋然性があり、多くの[候補]のうちで、私たちはひょっとすると、来たるべき者はティタンと呼ばれると推測するほどである。

[ここまでラテン語訳のみ存在]

しかしながら、私たちは反キリストの名について陽には声に出す危険性を冒さないようにしよう。というのも彼の名がはっきりとこの現在の時代に明らかにされるべき必要性があったのなら、黙示的幻視を観た彼によって宣告されてきたはずだからである。というのも、それ[or 彼]は非常に長い時代前に見られたのではなく、ほとんど我々の世代に対して近くに[見られた]のであり、ドメティアノス[ドミティアヌス]の治世の末期[or 目的]に向けて[見られた]のである。

Ἡμεῖς οὖν οὐκ ἀποκινδυνεύομεν περὶ του ονόματος του Ἀντιχρίστου, ἀποφαινόμενοι βεβαιωτικῶς· εἰ γὰρ ἔδει ἀναφανδὸν τῷ νῦν καιρῷ  κηρύττεσθαι τοὔνομα ἀυτοῦ, δι΄ ἐκείνου ἂν ἐῤῥέθη τοῦ καὶ τὴν Ἀποκάλυψιν ἑωρακότος. Οὐδὲ γὰρ πρὸ πολλοῦ χρόνου ἑωράθη, ἀλλὰ σχεδὸν ἐπὶ τῆς ἡμετέρας γενεᾶς, πρὸς τῷ τέλει τῆς Δομετιανοῦ ἀρχῆς. 

4[ラテン語訳]

しかしともかく彼はその名の数字を示唆している。この人物が来るときには私たちが、彼が何者かに気づいて彼を避けることができるようになるためである。しかしその名は隠されている。聖霊によって宣言される価値がないからである。というのも彼によって宣言されていたならば、彼[反キリスト]はひょっとすると長い期間持続したかもしれないのである。しかし、彼はかつており、今はなく、アビスより上りくることになっており、破滅へと向かう者[黙示録 17:8]であり、存在を持たない者であるから、彼の名もまた宣言されて来なかったのである。というのも存在しない者の名は宣言されないのである。しかしこの反キリストがこの世にある全てのことを荒廃させたときには、彼は三年六か月間統治し、エルサレムの神殿に座るだろう。そして主は天から雲のうちに、御父の栄光のうちに来るだろう。[その時、]この人物と彼に従った者たちを火の湖に送り、しかし義人たちのためには王国の諸時代をもたらすのである。それは安息であり、聖別された第七の日である。そしてアブラハムに対して約束された相続を回復し、その王国で主は、東と西から来る多くの者たちがアブラハムとイサクとヤコブと共に座に就くようにと宣言するのである。[マタイ 8:11]

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