七十人訳 ダニエル書 1章

http://ccat.sas.upenn.edu/nets/edition/40-daniel-nets.pdf

の英語訳(Old Greekの欄)を参考に、

http://en.katabiblon.com/us/index.php?text=LXX&book=DnOG&ch=1

のギリシア語を訳す。ただしギリシア語は写本88とシリア語訳に基づき、英語訳はパピルス967も含めて校訂された版から訳されているため若干の違いがある。前者にのみ含まれる部分は「{}」で示し、後者にのみ含まれる部分は「〈〉」で示すことにする。

七十人訳聖書は紀元前3世紀からモーセ五書の翻訳が始められ、紀元前1世紀までには全体の訳本が広まっていたと思われる、旧約聖書のギリシア語訳であり、世界最古の翻訳聖書とされる。

しかし現代までユダヤ人たちが継承したヘブライ語聖書であるマソラ本文とは異同もあり、代表的な異同の多い書物として、エレミヤ書などの他に、ダニエル書がある。

旧約聖書のギリシア語訳で重要なものには、紀元前に訳された七十人訳の他に、紀元後に訳されたアキラ訳、シュンマコス訳、テオドチオン訳がある。ギリシア語のダニエル書としては紀元後4世紀までにマソラ本文に近いテオドチオン訳が好まれるようになったため、現代まで継承された七十人訳のダニエル書の写本は極めて少なくなっている。

ヘブライ語聖書
原文 紀元前16世紀-紀元前2世紀
最古写本 紀元前2世紀-紀元前1世紀(死海写本)
最古完全写本 紀元後11世紀(レニングラード写本)

ギリシア語訳聖書
原文 紀元前3世紀-紀元前1世紀
最古写本 紀元後1世紀(複数の断片)
最古完全写本 紀元後4世紀(アレクサンドリア写本 = 写本A)

ダニエル書の七十人訳聖書(テオドチオン訳に置き換えられていないもの)
原文 紀元前3世紀-紀元前1世紀
最古写本 紀元後200年頃(チェスタービーティーパピルス967)
最古完全写本 紀元後10世紀(Chisianus 写本 = 写本88)

:::::以下訳文:::::

1節
ユダヤのヨヤキム王の第三年にあって、バビロンの王ネブコドノソル[Νεβουχοδονοσορ, ネブカドネツァル2世 在位 BC 605-562]がエルサレムに達し、それを包囲した。

2節
そして主はそれを彼の両手に渡し、ユダヤの王ヨヤキムをも、主の諸々の祭祀器の一部をも[渡した]。そして[ネブカドネツァルは]それらをバビロニアへ引いて行き、それらを彼の諸々の偶像の〈神殿〉に置いた。

3節
そして王は、彼自身の宦官長アビエスドリ[Αβιεσδρι]に、イスラエルの高貴な者たちの子らから、また王の血統の者たちから、貴族の者たちから、[以下のようなものたちを]自分のところへ連れてくるように言った。

4節
[つまり]身体に欠陥がなく、容姿が良く、全ての知恵について学があり、識字し、知恵があり、力強い、青年たちを王の家に[連れ]、彼らにカルデア人の諸々の文字と話し言葉を教えるよう[言った]。

5節
そして彼らには王{の家}からの規定された食事が毎日与えられるように[言った]。それは王の食卓からの[食事]と王が飲んでいたワインからのものであった。そして彼らに三年間教育し、彼らのうちの何人かを王の前に立たせるように[言った]。

6節
さてそこにユダヤ出身のイスラエルの子らの血族がいた。ダニエル、ハナニア[ハナンヤ]、ミサエル[ミシェエル]、アザリア[アザルヤ]である。

7節
宦官長は彼らに諸々の名前を割り当てた。ダニエルにはバルタサル[βαλτασαρ]、またハナニアにはセドラク[Σεδραχ]、またミサエルにはミサク[Μισαχ]、またアザリアにはアブデナゴ[Αβδεναγω]である。

8節
そしてダニエルは心のうちに以下のように決めた。すなわち王の夕食と彼の飲んだワインで[身を汚すこと]をしまい、と。そして彼は自分が汚されることのないように、宦官長に嘆願した。

9節
主はダニエルに、宦官長の前での名誉と好意を得させた。

10節
宦官長はダニエルに言った。「私は苦悩しています。私の主なる王があなたがたの食べ物とあなたがたの飲み物を指定したのです。それはあなたと共に育てられている諸々の異国人の青年たちよりも、あなたの顔が悪く、弱々しくなるのを見ないためなのです。私は自分の首を危うくするでしょう。」

11節
ダニエルはアビエスドリに言った。彼は宦官長であり、ダニエル、ハナニア、ミサエル、アザリアを担当させられていた。

12節
「あなたのしもべたちを十日の期間に渡って試してください。そして私たちに地からの豆類のいくらかから食べさせ、また水を飲ませてください。

13節
もし私たちの見かけが、王室の夕食を食べている他の青年たちよりも青ざめて見えるなら、あなたの思った通りにあなたのしもべを取り扱ってください」

14節
そして彼は彼らについてこの様に扱い、彼らを十日試した。

15節
さて、十日後、彼らの見かけは好ましく、身体の状態は王室の夕食を食べていた他の青年たちたちのものよりも、より良いことが示された。

16節
アビエスドリは彼らの夕食と彼らのワインを差し控え続け、彼らにいくらかの豆から代わりに与え続けた。

17節
主は青年たちに学識と理解と賢明さをあらゆる文芸において与えた。そしてダニエルにはあらゆる{諸々の言葉と、}諸々の幻と、諸々の夢と、全ての知恵について理解を与えた。

18節
さてこれらの日々の後で、王が彼らを連れて来るように命じ、彼らは宦官長からネブコドノソル王のもとへと導かれた。

19節
王は彼らと会話したが、ダニエルとハナニアとミサエルとアザリアと似たような知者は誰も見出されなかった。それで彼らは王のそばにいることになった。

20節
あらゆる論題と理解と教育において、王は彼らに質問したが、彼は彼らを、王国全体にいる知恵者や学者より十倍知恵があると見なした。

21節
ダニエル[の仕官]はペルス[ペルシャ]のキュロスの統治の第一年まで続いた。

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