深見真

作家・脚本家・漫画原作者。苦手な食べ物はしいたけ。

深見真

作家・脚本家・漫画原作者。苦手な食べ物はしいたけ。

最近の記事

創作怪談「嫌な感じのゴミ箱」

夜中。打ち合わせの帰り。友人のAくんと一緒に、とある街のとある道を歩いていたときのこと。Aくんが突然「この道はやめませんか?」と言い出した。なんでなの? 「いろいろあるんですけど……この道を歩いてるとき、何度か足をつかまれたり、背中を押されたことがあるんです。驚いて立ち止まって見てみると何もなくて……」 「それ怖いな」 「極めつけだったのは……。ほら、あそこに、嫌な感じするやつ、あるじゃないですか」 Aくんが少し離れた場所を指さした。 テナント募集中の札がはられた、

    • 香港映画転生

      ドラゴンボールだったりシティハンターだったり憧れの物語世界に転生するタイプの話、あれすごくいいと思う! 自分だったら、香港映画の世界に転生して、チョウ・ユンファ演じる殺し屋の弟分になりたいです。 「俺はアニキみてえな大物になりてえんだ!」 とかいって最後はもろとも蜂の巣にされるやつ。 香港映画転生。チョウ・ユンファ演じる殺し屋マークの弟分に生まれ変わって。こっちは転生前の知識を生かして、なんとかマークを助けようとするんです。白い鳩が飛んでるからもうすぐ銃撃戦だ! とか。で

      • 創作怪談「深夜のランニング」

        僕の友達の話。 既婚者で、名前はHさんとしておきます。マンション暮らしでまだ子どもはいません。 Hさんの仕事はシステムエンジニアです。勤めている会社はフレックスタイム制が売りだったのですが、転職したばっかりなので周囲に気をつかい、自分の都合よりもチームの作業を優先していました。自然と残業が増え、家に帰るのも遅くなる。 そこである日、奥さんに言われます。 「最近太ってきたんじゃない?」 その会社はラウンジに、共用のお菓子スペースがあるらしい。残業のときに甘いものを食べ

        • 優しさについて

          「俺はとても優しいのに女はそれに気づかない。女は顔がいいだけで優しくない男を選ぶ」という感じの言説をたまに見かける。 僕はこういう物言いがすごく苦手だ。「優しさ」を甘く見ている気がする。他人に害を与えないことが優しさではない。他人を傷つけないのは「当たり前」のことだ。優しさとは「他人の立場になって、その人がしてほしいことを考える」ことだと思う。そもそも「俺は優しい」という自己認識そのものが少し危ない。優しさとは主観的なものではなく、他人からそうジャッジされるべき客観的なもの

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