いつかの春

君が脱ぎ捨てたブラウスはまだあたたかくて
春の匂いを放っていた。
あの時何度もたなびくカーテンが撫でる
コスモスの赤がリビングに滲んでいた
最後の一欠片が食べずに
お皿に置かれたままのドーナツみたいに
パンプスの踵をコツリコツリと鳴らしながら
また春を脱ぎ捨てていく

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