夜中の乱文まとめ

死んだら電気分解されて天国に行くんだって。前髪をはためかせて急に走り出す。あの大通りまで止まらずに走れるか競走ね。息を整えながら歩くのってなんて可笑しいの。タイルをひとつふたり数えて歩く。電線に縁取られた空も意外と綺麗なもんだ。それから忘れ去られた壁のひび。それからそれから、


胸が張り裂けそうだと思った。それはビリ、と意外と薄い布が裂けるような音だった。飛び出したのは宇宙デブリのようなものでわたしなんだと拍子抜けした。意味もなく周回軌道上をぐるぐる回っていたのかと。つま先で挟んで力を加えるとパラパラと砂になってブラックホールに吸い込まれていった。


それを飲み下してから眠りに落ちる瞬間をおそらく君は知らない。左目で音もなく泣いて右目は三日月のように細めて弛緩した顔でニタリと笑っている。それは神様の不文律のように明日こそと未完成な泥の船をコネ続ける。この世でいちばん美しい瞬間に立ち会えたのだ。僕は誰にも告げずにそうポケットの裏に縫い付ける。


短いフレーズが繰り返し、伸び縮みしながら重なり合う。念仏のように何度も何度も。言葉が轍のように折り重なり意味すら無くなる瞬間にわたしたちは意味を見出す。君が最初に咳をして肋骨を一本僕にくれた。ぼくは細かく砕いたそれを散らしてこの世界に涙を産んだ。


成人式に行っていたら何か変わったかしら。首元にふわふわしたあの白いの巻いて。あれって一体なんのふわふわ。良くわからないけどかわいいからいいか。振り返ってじっとこちらを見た。瞼が腫れぼったい。たぶん私は変わらないね。行ってたら、っていうのが行かなかったらってのに変わるだけで。実は人生ってそれくらいの振れ幅で動いているのかも。お塩少々胡椒少々。悲しみと喜びもひとつまみってさ。

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