月光が引きちぎられた繊維の先のように闇の中に伸びてはその漆黒に飲み込まれていく。まるでついさっき誰かが厚紙を手で引きさいて出鱈目な丸を描いたような朧げな月だ。

電車が少しずつスピードを上げる。そのモーター音が強く高く順を追っていくように。曖昧なように聞こえるその音の変わり目は、旧態然とした厳格な指揮者の指揮棒の先をぴったりとなぞらえている。

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