感情が溢れ出した服
私は、親戚が苦手だ。
いつ頃から苦手意識を持っているかすらも覚えていない。
私のアイデンティティが形成されて行く中で、
やりたい事が周りの"普通"と異なっていると知ったとき、
そこに進む事に対して不安と、
恐怖があった。
だけど、
それに勝る程の興味があった。
親戚は皆エリートで大企業に勤めてたり、
社長だったり、公務員だったり。
私がやっていく事、今までやってきた事に
勝手に一人で負い目を感じていた。
長い月日、孤の道に逃げようとしていた。
気付けば5年の月日が経っていた。
明日、祖母が88歳のお祝いを迎える。
初めて、親戚から1着の洋服の依頼を受けた。
亡くなった、曽祖母のお着物を、祖母が着る事が出来る様に仕立て直して欲しい。
今の私に断る理由などひとつも無かった。
初めて1着作り上げるのに、泣いた。
懺悔、目の前の物事から逃げていた後悔、素直になれない自分への怒り、感謝の気持ち、お婆ちゃん大好きだよって気持ち。
ハサミを持つ手は震えていた。
洋服作るのってこんなに熱量使うっけ?って思うくらいには色々擦り減らしながら。
あぁ、私は人に嫌われるのが怖かったんだって
作り終えた頃には、今まで孤を選択していたはずが、
常に誰かがずっと気に掛けてくれていた事に気が付いた。
明日、祖母は88歳のお祝いを迎える。
おめでとう。大好きだよ。
力強くデザイナーとして生きていく孫より。
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