旅に出る:韓国の場合①
忘れもしない2012年の夏。
私は職場の友人と旅に出ることになった。久しぶりの海外。初めての韓国。
当時同じ職階の仲良し4人組だった私たちは、どうにかこうにか休みを合わせて、2泊3日の旅の日程を決めた。
楽しみ。
楽しみしかない。
事前準備の買い物も、荷造りも、全てが楽しい。
そんな私に友人の1人が高らかに宣言した。
「マコは浮かれるの禁止ね」
なんでや、その理不尽。
理由は単純明快で、
「浮かれると雨降るやろ。台風来るやん」
ぐうの音も出ない。
そう私は無類の雨女。大きな声でいえないが過去にあまりに浮かれに浮かれたタイミングで天変地異が起きたことが3回ある。
降水確率10%でその雨を降らせることなんて日常茶飯事。
世が世なら干ばつ時期にお供物もらって雨を降らせることを生業にできたに違いない。
まぁ雨季は息を潜めて暮らすけど。
そんな私なので素直にその指示に従った。
どこに行くかの話し合いに際しても決して笑わず、極めて冷静に旅の手続きを行い、どこのホテルにするかの話の最中も無表情を貫いた。
その甲斐あってか、旅行2日前まで何も起こらなかった。台風もいない。予想も晴れだ。
勝った。私は勝った。
雨女という呪縛を解かれ、ジンクスを覆した。
勝利に浸った私はやっと初めて浮かれた。
ウキウキで荷造りをはじめた。
しかし、その日の夜
急に台風が生まれた。
しかも東京の真横で。
しかも予報では東京から本州を東から西に進み、
韓国に上陸するという。
グループLINEからのメッセージが止まらない。
「浮かれた!?ねぇ浮かれたでしょ??」
3人に平謝りした。
よく考えたらおかしいよね。
結局私達は台風と全く同時に韓国に上陸した。
恐ろしいタイミング、驚異の雨女。嵐を呼ぶ女。
そんなリングネームはいらん。
そうしてはじまった旅。初めてのユーラシア大陸上陸。
この地で私は更なる地獄を見る。