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『ドラゴンボールの息子』その16「自販機がやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ!」

これまでうちの父は、いつも常人では思いつかないアイデアで家族を楽しませてくれた……というか、大いに振り回してきました。

でも、そのおかげでいい勉強をさせてもらったこともたくさんあります。

これは、僕がまだ小学生の頃のお話。

当時はまだ、祖父と祖母が同じ敷地の中で暮らしていました。

そんなある日、我が家に突然、大きな『自動販売機』がやって来たのです。

そうです……美味しいジュースを24時間、自分の好きな時に買えちゃうアレです!

これは父が当時、定年で仕事をリタイアしていた祖父が生きがいをなくさないようにと、のんびりしながらでも出来る『老後のお仕事』として用意したものでした。

それにしても、自販機を買っちゃうとは……
かなり思い切ったプレゼントですよね(笑)

実際に運営を任された祖父は本当に真面目な人だったので、せっせと自転車に乗って市場までジュースを仕入れに行き、それを売っては細かく帳簿をつけて管理していました。

その頃は家の外で『ゴトンッ』と音がすると、家族みんなで『売れたね〜』なんて盛り上がっていたものです。

そういう意味では、父の親孝行は成功していたのかもしれませんね。

ですが、そんな父たち親子の『いい話』などまったく知らずにいた僕は、とんでもない悪巧みを思いついてしまうのです。

商品の在庫が置いてある物置きに行けば、タダでジュースが飲めるじゃないかと!

この発想は子供とはいえ、完全なる盗っ人。
我ながら、とんでもない悪ガキであります。

それからは、毎日のように学校から帰ると物置きへ直行してジュースを拝借していました。

でも、祖父は本当に優しい人だったので、僕を咎めることはなかったのです。

そして調子に乗った僕は、とうとう自分が飲むだけじゃ飽き足らず、我が家へ遊びに来た友だちにまでジュースを振る舞い始めました。

そりゃもう僕は、近所のヒーローですよ。

『まこちゃん家はすげぇ!自販機がある!
タダでジュースが飲めるぞ!』
ってね。

それから僕はみんなのヒーローであり続けるために、来る日も来る日も、物置へ行ってはジュースをタダでもらい、飲み、友だちに配り、あとで祖父がそれを補充するという日々を過ごしていました……

そんなある日、別れは突然にやってきます。

我が家の前にあったはずの自販機が……
キレイに撤去されてるではないかっ!!!

聞けば、売り上げもそんなにたくさんあるわけじゃないし、おじいちゃんの体力も落ちてきたからとのこと……ってホント!?

完全に僕のせいなんじゃない!?

だって、アホみたいにタダで飲んでたもん!!
みんなに気前よく配っちゃってたもん!!!

いくら反省しても、時すでに遅し。

自販機バブル』が崩壊した僕の生活は一気に静かなものになってしまいました(笑)

今こうして振り返ってみても、祖父には本当に申し訳なかったとは思いますが……

ただひとつ、あの自販機が我が家に来たことで僕が学んだことがあります。

タダで手に入るものだとしても、その裏には多くの人たちの労働がある』ということ。

盗人猛々しいとは、こういうことですね!爆

おじいちゃん、ありがとう。
おかげで僕は……こんなに大きくなったよ。

と、強引にいい話っぽくして、このエピソードは終わりたいと思います。

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