『ドラゴンボールの息子』その18「強襲!サイヤ人」
僕はアニメ脚本家を父に持ったおかげで、小さい頃から「アニメ業界」を近くで見られるという、ありがたくも特殊な環境で育ちました。
今回は、そんな僕が経験した「声優さんとの思い出・第2弾」をお送りいたします。
第1弾は『ドラゴンボールの息子』その11として、ドラゴンボールのナッパ役の声優として知られる飯塚昭三さんとの思い出を書かせていただきましたので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。
さてさて、みなさんもそうだったかと思いますが、子供の頃には自分が見ているアニメ作品のキャラクターの中に『声優さん』たちがいることにはほとんど気づいていなかったですよね?
悟空は悟空だったし、ドラえもんはドラえもんだったわけで、キャラクターそのものが声を出しているんだと思い込んでいました。
これに関してはアニメ脚本家の息子として育った僕もまた、ある程度大きくなるまで『声優さん』たちの存在を知らずにいたのです。
そんな僕が、声優さんという存在を強烈に認識するようになったある出来事がありました。
それは、父が主宰していた脚本家集団「ぶらざあのっぽ」が開催した忘年会でのこと。
その当時はまだ会社としても成長途中だったので、忘年会は昭和の香りが豊かに漂うぶらざあのっぽの小さな事務所でささやかに行われていました。
料理はもちろん豪華なものではありませんでしたが、スーパーでオードブルを買って並べたり、ケンタッキーをたくさん用意したりと手作り感満載の楽しい会だったと記憶しています。
そんなお手製の忘年会に、まさかのゲストとして声優の堀川りょうさんが来てくださったのです……!
信じられます??
ドラゴンボールの「ベジータ」
聖闘士星矢の「アンドロメダ瞬」
名探偵コナンの「服部平次」などなど……
数々の名キャラクターを演じられた方です!
「なんだか、優しそうなお兄さんだなぁ……」
「声優さん」という存在すら知らない当時の僕は、堀川さんのことをてっきり事務所の近所に住んでいるお兄さんが遊びに来たんだと思っていました(笑)
忘年会が進み、僕が目の前の「ケンタッキーフライドチキン」を夢中で食べていると、父が突然「少し目をつぶっててごらん」と言いだしたのです。
僕は「もう、こっちはケンタッキーで大忙しだっちゅーの……」くらいの低いテンションで、渋々両目を閉じました。
するとなぜか、周りの大人たちがクスクスと笑う声が聞こえて来たんですよ。
僕はすぐに「あ、これはなにかイタズラされるんだな?」と理解しました。
その時、僕の後ろから……
「真くん、地球はこのオレ様が頂いたぞっ!!!」
いきなり、耳元にベジータが襲来!!!
僕は思わず、ゾワッとなって目を開けました。
すると、堀川さんがニッと微笑んでいるじゃありませんか。
その笑顔は、まさにベジータそのもの!
ですが、それでも僕は信じられずに『このお兄さんはなんてベジータのモノマネがうまい人なんだ……』と思っていました(笑)
すると堀川さんは続けて、あの名台詞を叫んでくれたのです。
「ネビュラチェェェェーン!!!」
その圧倒的な小宇宙……まさに、瞬っ!!!
これにはもう、僕の中のセブンセンシズも目覚めちゃいましたね。
そこで父がようやく、アニメには「声」を使ってキャラクターに命を吹き込む声優さんという職業があることを教えてくれました。
あの時、僕は堀川さんの生の声を通して声優さんの存在とその凄さを知ることになったのです。
この時ばかりは、さすがの僕もドラゴンボールの息子でよかったと心底思いました。
それ以来、僕はいつでもキャラクターの内側にいる『凄い人たち』の存在を感じながらアニメや映画を楽しむようになりました。
脚本家の息子という立場のおかげで、つくづく贅沢な経験をしてたんだなぁと今になって思うばかりなのであります。
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