makkuronyanko

どこに書けば良いか分からなかったこと

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私は猫を飼っている。毛並みの美しい黒い猫だ。と言っても、拾ってきた訳でも、わざわざ店で買ってきた訳でも無い。ある雨の日に、どこからともなくこの6畳一間にやって来てそのまま居着いてしまったのだ。私も他に同居人などはおらず、特に追い出す理由も無かったのでそのままにしておいた。 猫は物陰に住んでいる。臆病という訳ではなく、そこが猫にとって一番居心地の良い場所であるようだ。猫というものは従来そういう風なのだろうか。如何せん、家族以外の人間とも動物とも長期間暮らしを共にしたことのない

    • 彗星

      ほんと 先輩って恋人が絶えないですよね。何か秘訣とかあるんですか うーん...そうね、年に1度や2度、でっかい彗星みたいな、一直線にすごい速度で落ちてくるやつが居て落下地点にたまたま私がいるの。避けられないだけなのよ。 へえ。大変ですね、先輩、毎回ぺしゃんこになっちゃうじゃないですか。 そういう時は私も破片になって、自分勝手にどっかの誰かにところへピューって飛んでいくの。彗星はこうして作られているのよ。だからぺしゃんこにされても同情しちゃうのよ。

      • 蟷螂

        何かを動かすことや、反発することに疲れて もたりもたり、体重に身を任せて、沈んでいきたいときもある きめの細かい泥に毛穴を一つ一つ順に塞がれて、 自分を見放して身軽になって、上のほうから眺める幸福もある こういう幸福は中毒性が高いので要注意と、生まれたばかりの蟷螂に教わった

        • 見逃してよい光景では無かった 果てしないデルタ湖を囲う長い長い柵に、ネクタイがポツンと括り付けられていた。 私はそのデルタの周りを何十回と回っているが(それが私の仕事だからだ)、1周前には無かったはずだ。 こんな経験は何十年ぶりだろうか。前回立ち止まった時は確か、小さな赤い婦人靴が片方だけ落ちていた。そうだ、私はこの長い長い仕事の中で一時はそれだけが生き甲斐だったのだった。この広大なデルタの周りを、その持ち主も歩いているのではないだろうか、もしくはこちらの方に靴を探しに向

          雨の日の洗濯

          週末に大きな台風が来ると友人から聞いていた。それに先立ってか、今日はずっと強くも弱くもなく、生臭い雨が降っていた。私は今日はずっと部屋の中に篭っていたが、窓枠や換気扇の他にも私の知らないありとあらゆる部屋の隙間から、そういう雨の粒子が無数に侵入してきて部屋の中に充満しているのが分かった。どうして3年も住んでいる部屋なのに、私の味方をせずにこういった不明瞭な物を受け入れてしまうのか、と思った。 洗濯籠に4日分の洗濯物が溜まっていた。一人暮らしなのでもともと毎日は洗濯をしないと

          雨の日の洗濯