ZOOMでコンサート

都内でピアノ教室を主宰する吉原麻生です。こんにちは。
2月末にイベント中止、休校措置と世の中が新型コロナウィルスで急変していく中、オンラインレッスンの準備をして、4月から全てのレッスンをオンラインに移行しています。

オンラインレッスンに移行して半年ほどの9月末にZOOMで生徒さんたちの小さなコンサートを行いました。

実は休校中の3月に多くのお教室と同じく私の教室もコンサートを企画していました。
このコンサートは毎年行なっているもので、レッスン室で行う小さなものですが、1人の生徒さんがレパートリーなどから5曲選びコンクールなどでは挑戦できないものに挑戦する一年の成長を総括するコンサートです。
今年もそのつもりで準備をしていましたが、レッスン室は人がいっぱいに入っても15人くらいですから“密“にならざるを得ず、いつもの形で行うのは諦めざるを得ませんでした。
そこで、生徒さんと保護者に別々にレッスン室に来て演奏してもらって録画し、それを編集してYouTubeにアップしました。
レッスン室でコンサートモード(ピアノ以外の配置や照明が普段とは変わります)で演奏し、編集したものを見ると立派なコンサートに見えるようでしたが、演奏に不可欠な同時性(奏者と聴き手が同時に音楽を楽しむ)という点では圧倒的に不足していて、そのために演奏の集中力が今ひとつな演奏になっていたのが気になりました。

それで企画したのがZOOMコンサートです。
ZOOMは音楽のツールとしては不十分とも言われますが、同時性に関しては録画編集にはない緊張感が得られるはずと思いました。

ZOOMコンサートについて7月にご案内した時には、生徒さんの中には
「え?ZOOMで?どうやって???」
とびっくりしているお子さんもいらっしゃいましたが、コンサートの日を決めて準備を始めるとそれまで何となく練習していたのが集中力が上がり、それだけでコンサートを企画した意味があったように感じました。
ちなみに今回はテスト的な意味もあったので、1人の演奏量は『3ページ』としました。1ページの曲を3曲でも3ページ以上の曲1曲でも構わないという感じです。
これは聴き手の方が長く演奏を聴くのに耐えられるかどうか確信が持てなかったからです。

ZOOMコンサートで1番の問題は段取りでした。
それまでコンサートでは演奏前に客席に向かってお辞儀をしてピアノの前に座り演奏し演奏後にまたお辞儀をしてステージを去ります。
他の人が演奏している間は自分の席で静かに聴きます。
これらをZOOMでどのようにやったらいいでしょうか。
カメラの位置はスマホだったりタブレットだったりパソコンだったり色々です。
全員のピアノの前にお辞儀をするようなスペースがあるかどうかもわかりません。

そこでお辞儀の代わりとマイクチェックを兼ねて演奏前に自分の名前と曲名をアナウンスしてもらうことにしました。
演奏が終わったら
「ありがとうございました」
と言います。
自分の演奏以外の時にはピアノの蓋を閉じてマイクをミュートにして聴いてもらうことにしました。これでインターホンが鳴ったりしても心配ありません。
今までの段取りとはだいぶ違ったので、事前のレッスンで全員にその動作を確認しました。

ZOOMコンサートでは生徒さんたちだけでなく私も演奏しました。元生徒で現在東京音大附属高校で学んでいる生徒にもゲスト出演してもらいました。
結果的に、グループを分けてレッスン室で行なっていたコンサートよりも賑やかだったのもあり保護者の皆さまにもたいへん喜んでいただけました。
弾いてくれた生徒さんたちも期待した緊張感をあじわってくれたようです。
これは私も演奏していてタブレットから聴いている気配が伝わってくるのを感じたので決して大袈裟ではないとわかります。

ZOOMならではの出来事もありました。
音高に行っている生徒が弾いてくれた一曲が“木枯らしのエチュード“だったのですが、静かなイントロからいきなり激しいテーマが始まった瞬間、幼児や低学年の生徒さんたちが一度にとってもびっくりした顔をしていてそれが本当に可愛らしかったのです。
これは普通にコンサートをしていたら見られない表情でした。
そして、小さなお子さんもちゃんと集中して聴くことができるのだと確信した瞬間でもありました。

ZOOMには録画機能があるのでこのコンサートは録画してYouTubeにアップしました。
内輪にしか知らせていないにもかかわらずこの動画の再生回数は1日で30回を超えていたので、生徒さんたちが一通り観るだけでなく遠方に住むご家族にもご覧いただけたのではないかと想像しています。


ZOOMの欠点はもちろんあって、録画したものでも速さが不安定なところがありますし、誰の時の演奏が固まってよくわからなかった…という報告もありました。不思議なことにその報告や録画不調な部分はバラバラでした。
それでも、この日のコンサートとその準備を通じて生徒さんたちが学んだものは大きく、今はそれぞれの生徒さんが次の課題に取り組んでいます。
コロナ禍で始まったオンラインステップや動画提出のコンサートにも、今回の経験を元に挑戦する下地ができたと思っています。経験のないことに挑戦するのでは実力が出しにくいですからね。

オンラインレッスンもZOOMコンサートもコロナ禍で始めたことですが、単なる対面レッスンや集まってのイベントの代わりではなく新たな可能性があるものだと確信しています。










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