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おヘソのハナシ①

社会人になったばかりの22歳の年、これはそのときのハナシである。

私は卒業を目前に控えたある日、彼氏ができた女友達主催で飲み会をしたことがあった。その時にその子の彼氏が笑い話としてこう切り出したのだ。

「俺さ、ヘソのゴマとって入院したのよ(笑)」と。

その場にいた全員が爆笑だった。ただ一人、私を除いて。

私はその彼に

「それいつわかった?どんな風に痛かった?入院したの?手術したの?」

と矢継ぎ早に質問した。彼はちょっとビックリしながらも色々と教えてくれたあとに「どうしたの?」と聞いていたので

「実は少し前からおヘソのあたりが痛くて・・赤くなってるから、絆創膏貼ってる」と渋々答えた。

飲み会でおヘソに絆創膏貼ってるのを突然カミングアウトする20代の女なんて、後にも先にも私くらいだろう。もはや飲み会の内容なんてのはどうでもいいから、そんなことを切りだしたのだ(笑)

なので、不安に駆られて猛烈に帰りたくなってしまった。

幸い家から近い場所だったので、女友達と彼氏が家まで送ってくれた。明日病院に行くね、ありがとうといって、別れたのだが・・私が急に帰りたくなったせいなのか、友達の彼氏は気づいたら居酒屋のスリッパのまま私の家の前まで来ていた(笑)

しかも、鉄板ネタでウケると思ったこの話を私があまりに真剣に聞いたことにより、彼はなんだかすまなそうな顔をしていた。すまないのは、おヘソに絆創膏貼って飲み会に挑んだ挙句、彼の話を壊滅させた私なのに(笑)

というわけで、当時住んでいた家から徒歩数分のところに病院があったので、私は翌日そこに向かった。

診察室に入って問診を受けた時に、まずおヘソが赤い、痛い、変な汁が出て異臭がするということを伝えた。もちろん絆創膏も貼っていた(笑)

先生も「さすがに絆創膏は・・(笑)」

と言ったので、私は剥がしながら「これなんですけど・・匂い・・」と異臭がすることを伝えようとしたら、「いや、結構です!」とキッパリ断られてしまった。

当たり前である。患者といえど異臭がするっていわれるものを、わざわざ嗅ぐ医者などいない(笑)

診断名は尿膜管遺残症。要するに、生まれた後に閉じるはずの尿膜管が閉じずに残っていて、それが20歳前後で膿んでしまうという病気である。

当時は全く知られていない病気だったが、近年だと、羽生結弦選手が罹患している。そのニュースをみたとき、有名人がこの病気になることで少し知名度があがるな・・と思いつつも、私の数々の症状思い出して、羽生くんも大変だなと複雑な心境になったのは想像に難くない。

さて話は私と先生の診察時の話に戻る。ひとまず、その絆創膏をガーゼにしましょうと(当たり前である)。そして、この病気はやはり入院及び手術が必要になるということ。

新卒で入社も決まっていた時期だけど、とにかくそれで治るなら構わないし、何より近いからいいやと思って先生の話に、ではそれでとお願いをした。

すると先生は

「でも、ウチで入院手術となると、外科手術だから大きく開いて摘出したら閉じる形になるんだよ・・」と・・。

そして次の瞬間に最も忘れられない一言を放ったのだ。

「女の子だし・・おヘソ・・欲しいよねぇ・・??」

え?治る云々の前にヘソが欲しいかどうかの選択??20代で私はおヘソとさよならしなくてはならないの?

とりあえず

「ええ・・欲しいですね・・」

としか答えるしかなかった(笑)なんだこのやりとり。

すると先生は

「だとしたら、ウチの病院で手術するよりも、大学病院の形成外科を紹介するのでそこで手術しておヘソを作ってもらったほうがいい」

と答えた。

私は、おヘソが痛くて治るならと来たのに、突然おヘソが欲しいか言われ、欲しいというと大学病院へという選択になった。突然大事になった。

しかし、背に腹は代えられない。このままおヘソのない人生はさすがに厳しい。そこで先生にお願いして、隣県にあるK大学付属病院を紹介してもらい、通院することとなったーーー。

つづく。







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