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小沢健二さんの用いる「唾」という言葉

以前、子供とディズニー映画「ピーターパン2」を観ていたとき。ネバーランドにいる、ロストボーイズ達が「団結の儀式」と称して、手に唾を吐いて握り合うといったシーンがある。大人ぶったヒロインの女の子はこれを当初嫌っているのだが、子供心を取り戻すうち一緒に加わるのだ。

これって洋画でもよく使用されるシーン。日本でいう指切りげんまん的な。唾は自らの「魂」「信条」をかけて宣言する証明、という意味合いもあるそうで、手に吐いて命や大切なものを懸けて約束を守る宣誓をするそう。ちなみに地面に吐き出した場合には、「嘘をついたらこの場で自分は死ぬことになるだろう」と誓います。

そういえば小沢健二さんの歌詞について、この「唾」って表現を彼はたまに使うなぁと、彼の歌を聞いてふと思った。

探してみると彼の3つの楽曲に「唾」という表現が出てくる。

フリッパーズギター「青春は一度だけ」

小沢健二「痛快ウキウキ通り」

小沢健二「ダイスを転がせ」

どれも表現は全く異なっているが、基本彼は毎回、手に唾を吐き誓っているんじゃないかと考える。

まず、フリッパーズギターの「青春は一度だけ」

これはそもそも、ボリス・ヴィアンの『墓に唾をかけろ』が元ネタになっている。「寒い冬に唾吐くときに」は情景にもとれる。では、どこに吐いているかと言えば、これは元ネタにひっぱられて最初地面なのかな、と思ったが、これは手だと私は思う。「鳴り出した鐘 いらだちさえ僕は 抱きしめたいと思った」と続く。であれば、「手に唾を吐き誓い合う仲間達とチャイムさえもどかしいけど、それも青春だった」という意味合いではないだろうか。この楽曲を同級生である小山田さんが歌っているところ、主題が「青春は一度だけ」ということからも、この「唾」は仲間達との「誓い」の「唾」である。

次に、「痛快ウキウキ通り」

これって楽しい歌なんだけど、よく考えたらちょっと「ダメなヤツ」なんですよね。。だって一番はプラダの靴探してて、二番で一年遅れって・・。そもそも出会っていたのか、別れたのだろうか・・。そこで彼は最後に思うのです。「唾を吐き誓いたい!それに見合う僕でありたい!」これは確実に「手」です。「そんなダメな僕でも、君に見合うようになるよう誓うよ!命懸けてもいいぜ!」と突然の強気宣言。。これは、「ダメ男」からの「まだ見ぬ彼女(もしくはプレゼント忘れて別れた彼女)」への「誓い」の「唾」である。

最後に、「ダイスを転がせ」

これ好きな曲でよく聴くんですけど・・小沢さん渡米間近の後期の楽曲。これも一見すると「ダメ男」っぽいような歌なんですが、なんかこの曲って小沢さんは自分自身も鼓舞しているように聞こえる歌でもあります。「たぶん心と体の痛み たぶん唾つけ直すさすぐに」これも「手」です。恋愛の歌として考えると「痛快ウキウキ通り」の「見合う僕」としての「誓い」とはまた違ってます。たぶん「唾」をつけ直すってことは、たぶん「誓い」をかけなおすってことです。一見かなり「自分自身」を鼓舞するための「誓い」に見えて、相当な予防線はって保険かけてます。

で、この曲で鼓舞しているのは彼自身でもあり、

たぶんまだ大丈夫!たぶんまだやれる!たぶんしんどいけど、たぶん誓いかけなおすかもしんないけど!

もうね。。日本の音楽シーンにいて、ファンの期待に応えるのキツそうだったんだよね。。小山田さん同様、彼にもごめんね。。と思ったよ。

きっとさ、彼らは元々「手に唾をつけて誓い合った仲間」だったんだけど。一度目間違って地面に唾吐いたんだろうね。。なんかロッキングオンジャパンでも解散の経緯について小山田さんが間違って解散ってコマ選んだみたいに言ってたしね。。

ソロになって、当時のシーンの中で、沢山悩んで葛藤して、そしたらまたお互いに間違って地面に唾吐いちゃったんだろうなと思います。。


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