密やかな、楽しみ。

特にかわいくないし、モテるわけじゃない。
でも、人生楽しいし、それはそれでありかな?と思いながら高校時代を過ごしていた。
そんな私も嫌いじゃなかった。でも、言葉にできないもやもやが常にあって、きっと、それは劣等感だったのだと、今は思う。

そんな私が、今でも忘れられない一言が、ある。
その一言をいってくれた後輩は、もうそんなことを忘れてしまっているだろう。でも、宝物のような、お守りなような、そんな一言を、10年以上たった今も忘れていない。

大学生になり、私は寮に入った。
寮には大浴場しかなくて、最初は、人前で服を脱ぐのが恥ずかしかったのを覚えている。

時がたち、人前で服を脱ぐのにも慣れたころ、後輩が入寮した。

お風呂場の脱衣所でばったり会った後輩は、あの時の私のようにもじもじとしている。かわいいなとおもいながら声をかけ、ひととおり自己紹介をしたあと、お風呂場の施設や、使い方を教えて、その場を後にした。

後日、共有リビングで後輩を誘って、お茶をしていると、後輩がぽつりと言った。

「先輩、素敵ですよね。。。実はめっちゃ真似してます。」

そんなこと言われたことがないので、私の口からは間抜けな声がでた。

「お風呂場で初めて会った時に、上下おそろの下着を着ているのが素敵で、真似して買っちゃいました!」

私のことをほめられたのか、下着のデザインをほめられたのか、は関係なくて、自分にまつわることを「素敵」と言われた一言で、私の劣等感は救われた。

後輩の素敵な感性に感謝している。

それからは、常に上下お揃いの素敵なデザインの下着を買っている。
それは、彼女の一言があったからだ。

上下お揃いの自分が「素敵」と思える下着を着けているだけで、私は、背筋が伸びる気がする。

デートの時や、就活の時にも、「大丈夫、私は素敵な上下お揃いの下着を着ている」と思うだけで、根拠のない自信が私を包む。

こんなこと、友人にも同僚にも、その後輩にも恥ずかしくて言えないけれど、外見に自信のない、私の、密やかな楽しみ。

今、テレワーク中で、下は部屋着のままだけど、「私は上下お揃いの素敵な下着を着ている」ことで、まるで恋をしているように、世界がキラキラと輝くのだ。

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