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「Familiar」全曲解説その2

2曲目は「パレードwithわがつま」です。

 大学時代はジャズ部に所属して、カウントベイシーや、デュークエリントンなど40年代前後のスウィングジャズを弾いていました。あの頃音楽の楽しさと哀しさの混ざった雰囲気が好きで、憧れも織り交ぜつつ、そんな雰囲気を出せたらと思って作り始めました。

 コード進行も特別凝ったことはせず、古いスタンダード曲でよくあるもので、メロディも狙ったり驚かせようとせず、割と素直に作りました。 


 先に曲ができたので、曲を頭の中で流しながら、脳内A I(なんだその言葉笑)でMVを生成して、見えたものをそのまま歌詞に落とし込みました。街並みはいかにも童話的な、石畳と木製の扉が続く風景で、幼少期に読んだ「眠れない夜に読む本」みたいなちょっと怖い物語集が原風景だと思います。もう書籍を特定する手がかりは何もないので、記憶の中だけに存在する本になってしましましたが。


書き始めは自分でも何が言いたいかよくわからなかったのですが、終盤の「もうこっちの事は少しも気にしなくて良い」まで書いたあたりで、あの世とこの世を行ったり来たりする歌かも、と考え始めました。

  そう思って振り返ると、見える景色はどこか現実味が薄い気がします。脳内MVでは、パン屋の棚にはパンは一つも並んでなかったし、バス停の時刻表には時刻は一つも書かれていませんでした。

余談ですが、母親の胎内に入る前に、生前の魂はあの世のテレビに映る両親の顔から選んで降りてくるのだとか。その時の旅先案内人のおじさんがアンパンマンにそっくりなんだそうです。もちろん諸説ありますよ。


 曲を作り進めるうち、わがつまさんとデュエットにしようと思いつきました。2023年の8月に共演したわがつまさんは、幼さの残るまっすぐな声でありながら、俯瞰した大人の目線を持つシンガーで、この曲の構想にぴったりでした。

 最初はハモったりパートが入れ替わったりする予定だったのですが、録音の時、スタジオの隅っこで小さくなって、何度も何度も歌い直しながらピカピカになるまで歌を磨き上げる姿を見て、小細工なんて必要ないなと思い、二人でずっとユニゾンする歌になりました。 

 最終的に、ジャンル的なの国籍を薄めるために(あの世に国境はないですよね?)たゆたうのイガキアキコさんにバイオリンを弾いてもらいました。最初はジプシージャズを意識して事前にオーダーしていましたが、録音当日に、思いつきで「ちんどん屋さんで」と無茶振りをしたら、完璧なチンドン屋さんを演じてくれて、二人で爆笑しました。ソロの後ろで聞こえる鐘の音は、阿波踊りなどで叩かれる、当たり鉦の代わりに自宅でスキレットを菜箸で叩いています。


 軽い気持ちで作り始めた曲が、流れに任せて意図から離れ、あれよあれよと周りの人を巻き込み、思いもよらない形になっていきました。こういう人のコントロールを超えた作業は曲作りの醍醐味の一つな気がします。

 録音前から何度もライブで披露してたこともあり、バンドも肩の力の抜けた演奏です。エンジニアの原さんとバンドのリラックスした雰囲気とスタジオの自然な響きがぴったり重なって、とても良い「音」が収録できました。同じ空間にいると思って聴いてもらうと、また違う発見があると思います。ぜひ試してみてください。


Vo,Gt,Per 牧野容也

Pf 谷口雄

W.Ba カナミネケイタロウ

Dr あだち麗三郎

Vln イガキアキコ

Vo わがつま

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