読書石けん(毎週ショートショートnote)

子供の活字離れが叫ばれて久しい。
コンテンツに溢れたこの時代、本を読む子供など絶滅危惧種に近い。文章を読むことは思った以上に忍耐力を必要とする。

そんな中発売された「読書石鹸」は飛ぶように売れた。この石鹸で洗った服を着せると、子供が読書家になるという。
ぴかぴかの服を着て本に齧り付く我が子の姿に、親たちは手を取り合って喜んだ。

しかし、数ヶ月後、あちこちの家庭で悲鳴が上がった。
「何してるの!?」
キッチンに座り込み、調味料の製品表示をじっと読む子供。
分厚い国語辞書を朝から晩まで読み続ける子供。
異様な光景に親たちは立ち尽くすしかなかった。

読書石鹸の利用には注意事項があった。
使いすぎると「読書中毒」になってしまうため、週3回以上のご利用はお控えください。
この重大な副作用については、同封の説明書にしっかりと記載されていた。
しかし、説明書の文章を最後まで読むことができる親など、勿論現代社会には一人もいないのである。

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