石版画?栞?
『ムーミン谷の冬』でムーミントロールは
春はまだ遠いというのに自分だけ
冬眠から覚めてしまう。
同じく途中覚醒したちびのミイとは
心細さを分かち合えず、募る淋しさを
紛らわそうと、ムーミントロールは
屋根裏部屋で見つけた「石版画」を部屋の壁に
貼っていく…というのが旧版訳。
ところがここは原書を見ると
glansbilderとなっている。
石版画(リトグラフ)ならば
litografiだし、そもそもglansbilderって…?
瑞英・瑞瑞辞書には見当たらず、
(glans=つやつやの
bilder=絵・写真・イラストの
という言葉はあるが、glansbilderはヒットせず)
スウェーデン語系フィンランド人のスウェーデン語辞典に
bokmärkeの一種という記載があった。
bokmärkeっていうと…栞?
当時はWikipediaを調べても説明が乏しく
ネット検索したら、こんな画像が。
(ノルウェー語のサイト)
え、これってもしかして…
この「クロモス」、ムーミン美術館に昔々
行った際に買ったことがあるのだ。
コーティング紙だけど、かなり薄手の紙のものだ。
結構小さくて、壁に貼っても…うーん。
そこで、Facebook内にある
スウェーデン語系フィンランド人の
言語コミュニティで質問をしてみた。
すると続々とお答えが。
そして、シリーズ中では『ムーミン谷の冬』が
イチオシ!なThomas師匠からの回答がこちら。
皆さんの説明を総合すると、なるほど、
本文の描写もしっくりくる。
このやりとりは2018年のことで
当時のWikipediaの説明は今一つだったが
2023年現在のページを参照すると
かなり詳しくなっている。
(項目としてはBokmärke)
https://sv.wikipedia.org/wiki/Bokm%C3%A4rke_(samlarobjekt)
上記を読むと、元々はリトグラフ印刷だった旨が
説明されていて、
アルバムに貼られている画像もある。
旧版訳の「石版画」もあながち
「間違い」ではない、というわけだ。
さて、新版訳をどうするか。
「つやつやしたきれいな絵」や
「クロモス」を提案したところ、
うーん、「かざり絵」でという話に。
校正時に、Glansbilder の必須要素である
「光沢」を入れてほしい、
光沢がある紙=少し厚手の紙とわかるし、
イメージしやすくなるので…と
「つやつやのかざり絵」を推すも却下、
再校時にもう一度粘った。
結果、「小さなかざり絵」で決定。
ムーミン全集が再び改訂or新訳される頃には
「クロモス」で充分、通じるかもね。
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