![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132999448/rectangle_large_type_2_1c0a802827b306f8ec4f46c9c45616ea.png?width=1200)
テレビや雑誌、新聞等でご紹介したエビデンスまとめ
6月21日(金)アベマヒルズ
■骨髄移植を増やす方法についての経済学的研究
骨髄バンクの登録者数を増やすということが重要なのは論を俟ちませんが、どうすればドナー登録を増やせるのかはそう簡単な課題ではありません。過去に献血を事例に行われた多くの研究では、献血や骨髄バンクのドナー登録にお金を支払うと、善意の無償提供者が減少する可能性があることが指摘されています。有名なBanabou and Tirole (2006)は、お金というインセンティブを用いると「ティトマス効果」によって、献血や骨髄バンクへの登録などの利他的行動をクラウド・アウト(押し出し)を引き起こす可能性があることを指摘しています(献血に対価を支払うと、献血をする人が減ることを最初に発見したTitmuss (1970)の論文の著者の名に由来)。女性に献血時に(約7ドルの)対価を支払うと献血をする人が大きく減少したが、その支払いをチャリティーに寄付するオプションを与えると、献血に参加する人が増加したという研究があります(Gothenberg et al 2008)。
この論文では「登録時」ではなく「実際に提供した人への支払い」が効果的かもしれないこと、そして骨髄を提供した人に支払いをする場合、その支払いを公に辞退してバンクへの登録者の拡大に使用できるというオプションを提供することを提案しています。
Bergstrom, T. C., Garratt, R. J., & Sheehan-Connor, D. (2009). One chance in a million: Altruism and the bone marrow registry. American Economic Review, 99(4), 1309-1334.
DOI: 10.1257/aer.99.4.1309
■「生涯子なし」が世界で突出して高いこと
https://news.goo.ne.jp/article/abematimes/trend/abematimes-10131464.html
早速こちらで記事にしていただいていますが、韓国のデータを用いて行われた教育によれば、
「上位15%の高所得者層の所得あたり教育支出を10%増加させると、下位50%の低所得者層は所得あたりの教育支出を約0.5%ポイント増加させる。」
ということになっています。つまり、周辺の人たちの教育支出に影響を受けている可能性があるので、教育支出が際限なく上昇する方向の「子育て支援」は支援になっていないのではないかという問題意識です。実際に、この勧告の研究では「教育支出に対する課税が100%増加すると、教育支出は所得あたり8.9%から7.4%に減少し、出生率は2%増加する。」ということになっています。
韓国で行われた研究は
Kim, S., Tertilt, M., & Yum, M. (2024). Status Externalities in Education and Low Birth Rates in Korea. The American Economic Review, 114(6), 1576–1611.
DOI: https://doi.org/10.1257/aer.20220583
■EBPMデータベースによる本論文のまとめは下記
https://cyberagentailab.github.io/EBPMDB/doc/document135/
6月20日(木)大下容子ワイド!スクランブル
新紙幣の改刷、改鋳について
こちらの資料がわかりやすいです。
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/related/note231212a.pdf
5月23日(木)大下容子ワイド!スクランブル
■各地でクマ被害相次ぐ
ご紹介した兵庫県立大・自然環境科学研究所・横山真弓教授(クマの行動特性や生態がご専門)のインタビュー記事。
https://toyokeizai.net/articles/-/389286
西日本の自治体の多くは、特定鳥獣保護管理計画を策定し、「学習放獣」(唐辛子スプレーなどをかけて人の住む地域に戻ってこないように学習させ、山に戻す)を行い、その間に年齢や栄養状態、繁殖状況などを調査し、生息数を推定するなどしていたが、東日本ではもともとの個体数が多いことを理由にそうしたデータを取得してきていない。結果、生息数などの評価を誤ったことが、今日のような被害につながっている可能性がある。
■東大が10万円増を検討。授業料が議論に。
番組中で紹介された、本塾大学の伊藤公平塾長が中教審で提出した資料(伊藤塾長が提出された資料は、学納金に関する一部の提言だけではなく、全体をご覧いただく価値があると思います)。
https://www.mext.go.jp/content/2020327-koutou02-000034778-5.pdf
(今日の放送中に紹介しようと思っていたけどできなかった論文)
アメリカのデータを用いて、政府が研究費を減らすと、何が起こるかを実証的に明らかにした論文。起業や質の高い基礎研究による論文が減少。民間企業からの研究費や特許は増加するが、質が低くて企業向けのもの。イノベーションを起こすための研究費の配分のあり方について考えさせられる非常に重要な論文。
Babina, T., He, A. X., Howell, S. T., Perlman, E. R., & Staudt, J. (2023). Cutting the innovation engine: how federal funding shocks affect university patenting, entrepreneurship, and publications. The Quarterly Journal of Economics, 138(2), 895-954.
https://academic.oup.com/qje/article-abstract/138/2/895/6979841
5月20日(月)アベマヒルズ
■義務教育学校のメリット
イスラエルのデータを用いた研究で、小学校から中学校への進学時に、小学校からの親しい友達と引き続き同じクラスになった子供たちは学力が高く、行動上の問題が少なかったという研究。もしも、小学校の時の人間関係がよければ、義務教育学校という仕組みの中で継続的に同じ学校に通うことはプラスの効果が期待できるものの、人間関係が悪ければ、リセットできない分、マイナスの効果があることも考えられるのではないか。
Lavy, V., & Sand, E. (2019). The effect of social networks on students' academic and non-cognitive behavioural outcomes: evidence from conditional random assignment of friends in school. The Economic Journal, 129(617), 439-480.
https://doi.org/10.1111/ecoj.12582
▼当日の放送のまとめ
https://news.yahoo.co.jp/articles/3df5a63fcef282e2299cf46fe28c6631c82ae6f3?page=1
■習慣形成について
スポーツジムに通う「習慣形成」をするためには何が必要か、フィールド実験で示した研究。インセンティブ(ご褒美)と一定期間、繰り返すことが重要であることが示されている。
Charness, G., & Gneezy, U. (2009). Incentives to exercise. Econometrica, 77(3), 909-931.
https://doi.org/10.3982/ECTA7416
5月9日(木)大下容子ワイド!スクランブル
■トヨタ再雇用を65歳以上に拡大
川口大司先生の下記の経済教室の議論が非常に参考になります。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO36069670T01C18A0KE8000/
4月2日(火)アベマヒルズ
■改定で負担増?”中学英語”に懸念の声
英語力の向上に重要なのは、適正、動機付け、学習方法と言われる。応用言語学者の白井恭弘先生のご著書はおすすめ。
https://www.amazon.co.jp/dp/4004311500
なお、動機付けの文脈で紹介した「海外に留学することで大学生の国際志向性や英語力が高まったことを示した(私たちの)研究」は下記。
Higuchi, Y., Nakamuro, M., Roever, C., Sasaki, M., & Yashima, T. (2023) Journal of the Japanese and International Economies, 70, 101284. DOI: https://doi.org/10.1016/j.jjie.2023.101284
■”仲良し親子”陥りがちなワナとは
親はきょうだいのうち、第1子のほうがしつけが厳しいことを示した研究は下記。それが第1子のほうが学歴や収入が高くなることの理由だという。親が第1子のしつけに厳しいのは、第1子のためだけではなく、下の子がさぼったり、悪いことしないよう、「抑止」するためでもあるらしい。しかし、しっかりしつけを受けており、日頃からの見守りの度合いが強い第一子の方が成績や行動の面で有利になっている。
Hotz, V. J., & Pantano, J. (2015). Strategic parenting, birth order, and school performance. Journal of Population Economics, 28, 911-936.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4565797/
3月5日(火)朝日新聞(早期教育へのギモン:4)子と過ごす時間、「質」を大事に 慶応大学教授・中室牧子さんに聞く
▼記事はこちら
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15878818.html
■母親が子どもと過ごした時間が、3歳・5歳・7歳時点でその子の認知能力と非認知能力にどう影響したかを調べたところ、両方を高める効果があった。
Del Bono, E, M Francesconi, Y Kelly, & A Sacker (2016), “Early Maternal Time Investment & Early Child Outcomes”, Economic Journal 126: F96-F135
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ecoj.12342
■子どもが単独で使い方を決める時間は10歳から14歳の間に約2倍に増加し、逆に親とともに意思決定をする時間はどんどん減っていく。
Lundberg, S., Romich, J. L., & Tsang, K. P. (2009). Decision-making by children. Review of Economics of the Household, 7(1), 1-3
https://jenni.uchicago.edu/Spencer_Conference/December4th&5th_Papers/Lundberg_Decision-making%20by%20children.pdf
■「質」の高い時間が子どもの能力向上をもたらす
Price, J. (2008). Parent-child quality time does birth order matter?. Journal of Human Resources, 43(1), 240-265.
https://jhr.uwpress.org/content/43/1/240
3月5日 (火) Abemaヒルズ
■「目に見えない殺人者」花粉症で事故増加?
Akesaka, M., & Shigeoka, H. (2023). “Invisible Killer”: Seasonal Allergies and Accidents (No. w31593). National Bureau of Economic Research.
■ 父親の加齢 子どもの発達障害リスク増?
早生まれの子どもをADHDと誤診してしまう確率が高いことを示した論文
Layton, T. J., Barnett, M. L., Hicks, T. R., & Jena, A. B. (2018). Attention deficit–hyperactivity disorder and month of school enrollment. New England Journal of Medicine, 379(22), 2122-2130. DOI: 10.1056/NEJMoa1806828
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1806828
■ 世界初"中絶の権利"を憲法に明記へ フランス
中絶を止めるとひとり親の女性の経済状況が長期にわたって悪くなることを示した論文
・Miller, S., Wherry, L. R., & Foster, D. G. (2023). The economic consequences of being denied an abortion. American Economic Journal: Economic Policy, 15(1), 394-437.
https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/pol.20210159
・González, L., & Trommlerová, S. K. (2023). Cash transfers and fertility: How the introduction and cancellation of a child benefit affected births and abortions. Journal of Human Resources, 58(3), 783-818.
出産後の児童手当によって中絶を減らせることを示した論文
https://jhr.uwpress.org/content/wpjhr/58/3/783.full.pdf
2月29日(木)大下容子ワイド!スクランブル
■ メキシコにおける地方政府の不正(corruption)が中学生の学力テストにおけるカンニングを大幅に増加させた研究。成功するためには不正は必要であると考えるようになり、不正行為への抵抗感が下がる。
Ajzenman, N. (2021). The power of example: Corruption spurs corruption. American Economic Journal: Applied Economics, 13(2), 230-257.
https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/app.20180612
■ 選挙における投票率
松林哲也 何が投票率を高めるのかhttps://www.amazon.co.jp/dp/464114947X
第6章 新しい政党の参入は投票率を高める?
第7章 女性議員が増えると投票率は上がる?
■訂正
放送中に「地方議員の兼職を認めるべき」という発言をしましたが、確認したところ、禁止事項に該当しなければ既に認められていました。お詫びして訂正いたします。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20231026b.html
2月29日(木)朝日新聞 (あすを探る 経済・教育)移動の足守るライドシェア 中室牧子
https://www.asahi.com/articles/DA3S15874794.html
https://www.asahi.com/articles/ASS2X6Q5HS2VUCVL027.html
■ ライドシェアが2015年には米国内で68億ドルもの消費者余剰(支払ってもよいと考える価格と実際に支払った価格の差)を生み出した。
Cohen, P., Hahn, R., Hall, J., Levitt, S., & Metcalfe, R. (2016). Using big data to estimate consumer surplus: The case of uber (No. w22627). National Bureau of Economic Research.
https://www.nber.org/papers/w22627
■ ライドシェアが飲酒運転による死亡者を減少させた。
Anderson, M. L., & Davis, L. W. (2023). Uber and Traffic Fatalities. Review of Economics and Statistics, 1-30.
https://faculty.haas.berkeley.edu/ldavis/Anderson%20and%20Davis%20Uber.pdf
■ライドシェアが渋滞を増加させた。
Tarduno, M. (2021). The congestion costs of Uber and Lyft. Journal of Urban Economics, 122, 103318.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0094119020300899
■ 米国の主要都市におけるウーバー運転手の稼働率と生産性は、ともにタクシー運転手よりも高い。
Chen, M. K., Rossi, P. E., Chevalier, J. A., & Oehlsen, E. (2019). The value of flexible work: Evidence from Uber drivers. Journal of political economy, 127(6), 2735-2794.
https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/702171
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?