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【夏至】 菖蒲華 (あやめはなさく)

昨晩から雨が続いて重たい朝です。じっとりとした。

そんな言葉で「チェックイン」した、今朝のオンライン・ミーティング。相手は奈良、そして愛知に暮らす人。雨音はスクリーンに届く前に吸収されて何事もないようだ。けれど屋内にいても、晴れていない日にはその空気感がなんとなく感じられるのだから不思議だ。窓からさしこむ光の質に、人は敏感なのだろうか。

雨だと思って過ごしてみたら、突然光が強くなり、見上げると青空が少しずつ広がっていた。外にでると小さな雨粒のようなものが肌に触れる。虹をつくるには小さすぎるほんとうに小さな雨粒を浴びながら、どんどん広がる空を見渡す。そのまま海へ。見えるはずない虹を一度は確かめなくては気が済まなくて、空の広い空間へ。

今年は一度も紫陽花を見にお寺に足を運んでいない。そういえば写真を送ってくれた人がいたな。晴れた週末の朝の時間に。それでもう、私は十分なのかもしれない。

近づきすぎると、勇み込んだ感覚になる。それよりはきっと、すれ違うくらいがいいのだ。存在を気にかけながら違う場所で空を眺め、自転車で行き交う、同じ景色の中で。

それでもやはり、離れることには何かの落下と無重力があるので、私のこころにはそわそわしたものが漂っている。ぬるいお湯のような、あたたかな水というような。表面を手のひらで辿るときくっついてくる水滴の弾力のような、掴みたくなる本音に掻き立てられるようにして。

気がつくて空の青さはだんだんとぼやけ、ふたたび灰色があたりを覆いかぶそうとしている。

コーヒーを入れる。意識をまた、テーブルの上に戻そうとして。

フォーカスを忘れてはならない。風景が主役で、君はただのその一部なのだ。