名探偵ボディビルディング

　ここはカリフォルニア州マッチョ地区。
　住民全員がマッチョというご機嫌なエリアだ。
「犯行現場はここかい？」
　名探偵ガッツが、黒光りする体を見せつけるようにゆっくりとキッチンに入ってきた。
「肩メロン！　ガッツさん、今日も仕上がってますね」
「肩メロン、刑事くん、君もね」
　キラッと白い歯を見せて笑う名探偵ガッツ。ナイスバルクだ。
「何があった？」
「窃盗事件です。ここの家の主人が新聞を取りに行っている間に、何者かが朝食のササミを奪っていったのです」
「うーむ」
　ガッツが犯行現場を見回す。
「犯人が分かったぞ」
「なんですってっ？」
「簡単な推理さ。テーブルにプロテインが手つかずで置いてある。人間なら飲まずにはいられない。つまり犯人は人ではない。犯人は猫、飼い猫のキャットちゃんだ！」
　びしっとキャットちゃんを指さす。
　にゃー、キャットちゃんが観念したかのようにうなだれた。
　頭脳明晰、腹筋ちぎりパン、ガッツのおかげで今日も町は平和である。

＊

たらはかにさんの【＃毎週ショートショートnote】に参加しています。

【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか？』お題発表！2/12｜たらはかに（田原にか）｜note