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ネコクインテット

「かならず戻ってくるから待っていてね」
 魔女アリアは楽器たちにそう告げると、パタンと扉を閉め出ていった。
 年をとらない彼女は、ひとところには留まれない。周囲の人間に怪しまれるからだ。
 十年、二十年、百年……。
 アルルの古城で楽器たちは待ち続けた。

 三百年が過ぎたころ、ヴァイオリン姉妹が『アリアを探しに行こう』と言い出した。
 アリアの楽器たちには魔法がかかっている。喋ることもできるし、簡単な魔法を使うこともできる。
「僕は反対だな」コントラバスが重々しく反対した。
「探すためには人間に変身しなきゃならんが、人間は不便だ。三食食べないと生きていけない」
「じゃあネコになろうよ。身軽だし、ねずみならあちこちにいるしさ」とチェロ。
「お、いいね」ヴィオラが軽快に賛成し、みなを見回した。異論はない。
 こうして五挺は、五匹のネコに変身した。

 パリの街角に楽しい五匹のネコがいる。
 甘いヴァイオリン、深いコントラバス、優雅なチェロ、柔らかいヴィオラの鳴き声をもつネコたちが陽気に歌っている。
 みた人を笑顔にする極上のハーモニー。
 うわさがうわさを呼び、今やフランス中の人気者だ。

 きっともうすぐアリアの耳にも届くだろう。

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【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!2/5|たらはかに(田原にか)|note

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