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2月の140字小説 5篇『お題 分』

①「鬼は外 福はうち」
私は泣きながら節分の豆をまいた
失業し、恋人にはフラれ、散々な一年だった
今年こそは幸せになりたいっ!
『ピンポーン』
扉を開くといつもの配達のお兄さんが立っていた
「あれ? なんか呼ばれた気がして」
頭をかく仕草が可愛い
「お茶でもどう?」
私は福を招き入れた

②「鬼は外 福はうち」
妻が節分の豆まきをしている。
競馬新聞を見ながら横目で見ていると、
足がムズムズしてきた。
「鬼は外」
何だ? 足が勝手に動き、庭に放りだされた。‥家に入れない
妻がガラス越しに冷たく言った。
「鬼さん博打やめる?」
「‥やめ、ます」
そう誓わされた節分の夜のお話

③彼氏が熱を出したらしい
お粥をもっていこう
鍋の蓋を開けると、小さな鍋奉行がいた
「何を作るのじゃ」
「お粥を」
「馬鹿者! 鍋を作れ」
「ははー」
私は二人分の鍋を作り、彼氏の家に持っていった。
ん? 何で玄関にハイヒール?
お奉行、お沙汰は?
アウトじゃ!!
私は彼氏に鍋を投げつけた

④落ちきった砂時計を見ながら思う
自分の人生は砂時計とおなじ
娘のために身を削り、全てを彼女に注ぎ、空っぽ
娘が嫁いだ今どう生きればいい?
カタン
砂時計がひっくり返された
「また一から注げばいいんだよ」一郎
「そうさ、母さんには僕らがいるよ」二郎
「晩飯まだ?」三郎
‥もう嫌だこんな人生

⑤『はたしてを使った短文を作れ』
国語の問題。
隣の畑くんの解答をみて驚いた。
『はたしてを使った短文を作れ』と書いてある。
「違うよ畑くん、はたしてを使った短文を作るんだよ」
「『はたしてを使った短文を作れ』は、はたしてを使った短文でしょう?」
うー大分混乱してきた。
○か×か、はたして

ツイッターから下記のコンテストに応募したものを転載しました。

https://note.com/hoshi_boshi

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