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シアターモリエールへの報道に対して思うこと

※文末に追記アリ(7月16日)

『THE☆JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!―』というタイトルの公演でクラスターが発生してしまった。

出演者やスタッフ、さらに観客まで入れると約40名の罹患者が確認され、850名が濃厚接触者に認定という一大事態である(2020.7.14時点)。

わたしはこのステージを観ていないので、内容や演出についての言及は避けるが、報道でどうしても違和感を覚えることがある。

その”違和感”とは当該公演を行った劇場=シアターモリエールへの報道のされ方。少なくとも、劇場側が出したリリースを読むと、貸館としてやれることはやっていたと感じる。

そう、シアターモリエールは基本的に「貸館」として稼働する劇場。つまり、主催者から劇場費を取り場所を貸す劇場なのである……と書いても「ん?」になる人が多いと思うので、簡単に説明したい。

劇場運営には下記のようないくつかの方式がある。

1. ほぼ100%主催も兼ねる劇場
企画・製作から公演に深く関わる劇場。PARCO劇場やシアターコクーンなど

2. 興行会社が所有している劇場
松竹や東宝、劇団四季などの興行会社直営の劇場。歌舞伎座、帝国劇場、四季の専用劇場など

3. 主催公演と貸館の両方で稼働する劇場
公共劇場に多いパターン。新国立劇場、東京芸術劇場、世田谷パブリックシアター、KAAT神奈川芸術劇場、あうるすぽっとなど

4. ほぼ100%貸館として稼働する劇場
中小の民間劇場のほとんどがこのバージョン。紀伊國屋ホール、本多劇場、ザ・スズナリ、シアターグリーンなど

今回、クラスターが出てしまったシアターモリエールは4の「ほぼ100%貸館として稼働する劇場」。なので、当該公演の製作にモリエール側は直接関わってはいない。

もちろん、今のような状況ではコロナ対策に関して、主催者側と劇場との間で連携も取っていただろうし、劇場サイドに責任がまったくないかと問われたらそれは違うかもしれない。が、ワイドショーやニュースで映るのはモリエールのエントランスや劇場看板ばかり。また、多くのコメンテーターたちが”主催”と”劇場”を混同しているフシもある。よく知らない人が番組を見たら、モリエール側に大きな原因があったと刷り込まれてしまうだろう。

2月末から続くライブエンターテインメント業界の”自粛”で、民間中小の劇場は経済的にも大打撃を受けた。先日は八幡山のワーサルシアターが、今日も新宿ゴールデン街劇場が閉館を発表したばかりだ。貸館として稼働している劇場は公演数が激減する今、どこもぱったり倒れてしまわないようギリギリの状態で耐えている。

すでに新国立劇場やPARCO劇場、サンシャイン劇場などで新作舞台の初日が開き、これから劇団四季、宝塚歌劇団、歌舞伎と大劇場作品も再開する中、どの主催団体も出演者やスタッフ、観客……そのすべてからクラスターを出さないよう大変な努力で対策をしている。そしてそれは幕を開けるすべての劇場関係者も同じである。

もちろん、今回のような事態が起きた原因はとことん究明するべきだし(本当に入り・出待ち対応で握手やハグがあったのかも含め)、同じことを繰り返してはならない。が、この件で、長きにわたって新宿の街で多くの演劇人たちの登竜門ともなってきた小劇場=シアターモリエールが立ち直れないほどの打撃を受けるのはとても悲しいことだと思うのだ(今回の件で、モリエールで公演予定だった舞台やライブが他の会場への変更を決めている)。

もしこのnoteを読んで少しでも「……そうか、大変だな」と思ってくれた人は、取材の方向性が間違っていたり、恣意的だったり、適当なコメントで時間を埋めている番組を見て「あの劇場が悪い」と、どうか決めつけないでほしい。

※7月16日 11:00追記※

上記のnote、かなり多くのPVがあり、今も伸び続けている。それだけ”劇場クラスター”と呼ばれる現象に対して、世間の関心が高いということだろう。また上記noteに対して「モリエールから金銭を受け取って書いた」等の100%事実と異なる&悪意しかない書き込みも確認している(そんなワケないじゃん……そういうの対応も考えてるからね)。

7月16日の6:00にスポニチさんが
物販で感染拡大か…劇場側の要請無視、ガイドライン従わず 新宿舞台クラスターとの記事を出した。

(↑リンク先=スポニチさんの記事、7月16日20時時点で削除の模様)

劇場がある新宿区の保健所にも独自で取材をし、当該舞台の主催会社、ライズコミュニケーションがモリエール側の提示した感染防止策を遵守していなかったことや、小劇場協議会ガイドラインで禁止されている会場内での握手や物品販売を行っていたことなどを明らかにした。記事には「劇場側の要請を(ライズが)無視していたようです」との文言も。

スポニチさんの記事、これまで他が触れなかった保健所担当者のコメントや、主催が行った物販等の問題点も扱ってくれて、やっとメジャーな媒体が広い視野で取材してくれた……との思いである。

上にも書いたが、今回の件で劇場に全く責任がないかと言えばそれは違う。が、”劇場クラスター”のような言葉が先行し、貸館として営業しているシアターモリエールに多くの原因があるかのような論調にはやはり異を唱えていきたい。

Twitter makigami_p

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