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83.ホルストの水星にたどり着く。
埼玉県の富士見市に市民文化会館きらり☆ふじみがある。開館20周年を迎えた事業のひとつとして、毛色の変わったコンサートを企画したいとのことで、ぼくに出演のオファーが来た。2021年のこと。
新しく就任したふたりの芸術監督田上豊と白神ももこの企画は、『モガ惑星』というタイトルだった。
七つの惑星を大編成のオーケストラによって壮大に描く、ホルスト作曲の組曲『惑星』を主題にして、ときいた時、ぼくはそのオーケストラのどこに参加するのだろうかと考えた。
「巻上さんには、水星を担当してもらいたいです」という。
ホルストの惑星のうち、火星と金星と水星を今回は、さまざまな音楽家とダンサーの組み合わせで、オリジナルなコンサートを演出したいということだった。
ぼくは舞踏の向雲太郎との組み合わせで、制作して欲しいとのこと。演出は田上豊が行う。
あんまり全貌がわからなかったのだが、このコロナ禍で、なにかを企画し、しかもぼくに依頼をするような人は、まずほんとに少ないので、参加してみようという気になった。
しかし、どうやってホルストの曲を忍び込ませたらいいのか。
「少しでもその要素があれば」という、なかなかに大雑把な依頼だからできたとも言える。まじめに演奏しなければならないとなると、とても一ヶ月では間に合わない。
そんなわけでベルリンフィルでも聴きながら、気長に夢想した。「水星」のパートは、3分くらいだろうか。
ぼくと雲太郎さんが頼まれた時間は20分である。3分を20分にするのは、テンポ異常にさげるとか、方法がなくはないが、最後の3分くらいまでは、ずっと自分の好きなことをやって遊ぶという、勝手な結論を導き、オーケストラパートは、MIDIデータをもとに自分で音色を選んだ音データをサンプリングして、それをリアルタイムに変調させることにした。
そこにたどりつくまでは、声、尺八、口琴、テルミンを使って、銀色に塗った雲太郎さんの、舞踏を眺めながら、自由に演奏する。
そうこうしているうちに、プロローグのところの詩を歌にしてもらえないだろうかと依頼がきた。
「目盛り」と「メモリー」をかけた「こえ」が「からだ」を探すうた。テキストは、宮崎の劇団こふく劇場の永山智行が手がけたもので、読んで面白かったので、数分で作曲できた。まあ、ただ歌っただけというか。
目盛り 巻尺の 目盛り ミリミリとセンチになって
メートルあげて あそこ から ここ までの 刻んだ距離を 測り直そう
演出家たちは、せりふまで言って欲しいともなり、演劇の人にこころをゆるしはじめると大変なことになる。
しかし、これはどんな舞台だったんだろうな。観てみたいものだ。それにこんなことをやらしてくれる富士見市はなかなかなところだと思った次第。
2021年8月
日程
2021年8月21日(土)
18:00開演/17:30開場
8月22日(日)
14:00開演/13:30開場
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