85.クリスチャン・マークレーと小田原で
美術家のクリスチャン・マークレーは、ニューヨークの音楽シーンでジョン・ゾーンと共に活動した。70年代後半、ターンテーブルを楽器としてステージに乗せた先駆者としても知られている。ブロンクスでヒップホップが誕生したのとほぼ同時期であるが、アプローチが異なる。クリスチャン・マークレーは、ダダやジョン・ケージからの影響で、レコード盤を扱い、サウンドをコラージュしていた。
東京都現代美術館ではじまった大規模な国内初の個展「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」では、彼の革新的な作品に触れることができる。(会期は11月20日〜2022年2月23日)
10年前に、横浜トリエンナーレで、ぼくが上演した『Manga Scroll』も再演される。この作品は、日本のマンガに登場する吹出しのオノマトペを英語に翻訳したグラフィックのコラージュを、約20メートルの巻物にしたものである。演者は、それを読み取り、解釈して、声にしていく。
ニューヨークでは、ジョアン・ラ・バーバラとシェリー・ハーシュ、ロンドンでは、フィル・ミントン、ベルリンでは、デビッド・モスがパフォーマンスをして、横浜ではぼくが上演した。
一番短くて15分。フィルは60分にもわたる大作に仕上げていた。ぼくはその中間で、40分ほどにおさめた。なかなかやりがいのある作品である。
そのスコアともいうべき巻物に描かれたオノマトペのコラージュは、見事な迫真の美しさで、圧倒される。
また、今回は、もうひとつ『NO!』という15枚のオノマトペのコラージュの作品も上演される。こちらはより激しく、色彩も伴っている。
先日、オープニング企画で、∈Y∋が、マイクとエフェクトをたっぷり使い、かなりの凶暴性をもって、叫んで見せた。ぼくは、江之浦測候所で上演することになっている。さて、ぼくはどうやって演じようか。
江之浦測候所では、《Found in Odawara》 と題しての、サウンド・パフォーマンスの一環である。出演は、クリスチャン・マークレー、巻上公一、鈴木昭男、山川冬樹、山崎阿弥、大友良英の6人である。
ぼくは、『NO!』、山崎阿弥は、『Manga Scroll』を演ずる。ほかの4人は、クリスチャンが小田原で集めたオブジェクト
を使い、パフォーマンスをする。
先日クリスチャンとともにオブジェクトハンティングにも出かけてきた。さまざまな廃棄物の集まる場所や、リサイクルショップをまわり、ぼくは真鶴の小松石の採掘場や、小田原風鈴で有名な柏木鋳物に案内した。
これはとんでもないサウンドパフォーマンスになりそうだ。
2021年11月
巻上公一
2011年の横浜トリエンナーレでのパフォーマンス
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