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「カルメン故郷に帰る」へのオマージュ

 古い映画が好きで、高校生の頃はよく名画座に行っていた。
 アンジェイ・ワイダやエイゼンシュテインのような重たい映画が好きな反面、あまり深く考えずに観られるような映画も好きだ。特に衣装が可愛い映画が好きだ。
 「パリの恋人」「巴里のアメリカ人」「麗しのサブリナ」のイーディス・ヘッドの衣装、新めの映画だと「タイピスト!」の衣装がすごく可愛い。日本映画では「カルメン故郷に帰る」の衣装がとても可愛いと思う。

 「カルメン故郷に帰る」は衣装だけではなく、全体としてとても好きな映画で、ネガティヴな気持ちになったときに観たくなる。
 初めてこの映画をきちんと見たのは2000年代はじめの頃だっただろうか。海外旅行に行くときに飛行機の中で観たのだった。
 ストーリーを書き出すと膨大な文章量になってしまうのであらすじはこちらから。

https://ja.wikipedia.org/wiki/カルメン故郷に帰る

 私がこの映画を好きな点は、衣装の可愛らしさに加え、嫌な人物が一人も出てこないところ。ちょっとした悪役はいるのだが、最終的には良い人になって映画が終わるので、とてもハッピーな気分になる。

 最近になって知ったことなのだが、日本最初のフルカラー映画ということで、衣装とメイクの色彩にはすごく気を使ったらしい。どの衣装も色彩豊かで、主人公を演じる高峰秀子を美しく、というよりはとても可愛らしく、愛すべき人物として見せている。ロケ場所となった北軽井沢の風景もとても美しい。

 私の父に言わせると「中身の空っぽなつまらない映画」なのだが、ネガティブな要素の全く入らない、可愛らしいものや美しいものをひたすら見せてくれるものは、人を無条件に幸せにする。

 先月、ふとこの映画のことを思い出して、雰囲気を似せた服を着て撮影をしたが、仕上がりは高峰秀子と言うよりも、某ホテルチェーンの女性社長のようになってしまった。浅間山にかかる雲を気にしながらの撮影は楽なものではなかったけれど、ほんの少しリリィ・カルメンになった気分を味わえた撮影はとても楽しかった。
 

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