クリスマスカラス|毎週ショートショートnote
「明るすぎます」
上空でホバリングしながら、隊を導く部隊長が言った。
「これでは私たちの姿は人間たちに丸見えですが、どうしますか」
そりに乗った男は眉を寄せた。ふだんの年なら午前零時を過ぎれば世間はすっかり闇の中に沈み、誰にも気づかれずに下りていって、それぞれの家を回ってくることができる。だが、今年は土曜日。町にはまだ明かりが灯っている。
「あすの夜に延期しますか」
参謀役の一頭が決断を促すように訊く。
いや、と男は首を振った。
「子どもたちは我々のことを待っているのだ。朝起きて枕元に何もなければ、さみしい思いをする。――彼らに頼もう」
男の言う〈彼ら〉が誰のことなのか、部隊の誰もがすぐにわかった。と同時に、誰もがそれを簡単には容認し得なかった。
「しかし、ヤツらは袋を破るほうが専門で――」
参謀の言葉を遮るように、男は言った。
「今夜くらい、仲間を信じろ」
まもなく、漆黒の羽に身を包んだ一団が男の元に集結した。