チャリンチャリン太郎|毎週ショートショートnote

鬼ヶ島の鬼たちを見事に成敗すると、彼らにむかって桃太郎は高らかに言った。

「おまえたちにはふたつの選択肢がある。ここにある財宝をすべて渡すか、あるいは、この島にある硬貨をすべて渡すかだ」

鬼たちは短い協議のうえで当然のように後者を選択し、鬼ヶ島じゅうの家という家、店という店をすべて回ってあらゆる硬貨をかき集めた。

やがて、桃太郎たちの目の前には硬貨が山と積まれた。一円玉、五円玉、十円玉、五十円玉、百円玉、そして五百円玉……。桃太郎は犬と猿とキジに命じてそれをいくつかの袋に分けて詰めさせ、舟に乗せた。

舟が岸を離れると、犬が言った。

「あの小さな丸い金属は何ですか? 『コウカ』って言ってましたけど」

「そう訊かれると思ってたよ」

桃太郎は苦笑した。

「あれはお金だよ。アルミニウム製で表面に数字の〈1〉が書いてあったのが1円」

「ええっ! そんなものがあるんですか!」

「正確には『あった』だな。財宝なんかよりもずっと高く売れるぞ」