全力で推したいダジャレ|毎週ショートショートnote
「やはり、ターゲット層を広げていくべきかと」
新たなアイドルを生み出す会議の中、前田は口を開いた。この芸能プロダクションでさまざまなアイドルを育ててきたが、行き詰まりを感じ始めてもいた。
「市場はすでに飽和状態です。次に開拓すべきは四十歳以上のオジサン世代。そして、その起爆剤がダジャレだと考えています」
ディスプレイに資料を投影する。
「ダジャレはオヤジギャグとも呼ばれ、これまで長きにわたって嫌悪の対象となってきました。オジサンたちに全力で推してもらうために、これを利用します」
上司の高橋が興味深げに身を乗り出した。
「具体的には?」
「芸名とキャラクターをダジャレにします。たとえば、かぜをひきやすい子は名前を『猫田』にしておいて、『猫田が寝込んだ』のような、禁忌と言えるような伝説的なダジャレにリンクを張っていくワケです」
こうして新アイドルグループ〈DJR48〉は翌年、西暦二〇九五年の新人賞レースを席巻していくことになる。