執念第一|毎週ショートショートnote
ある祈祷師が雨乞いをすると、必ず雨が降る。なぜなら、その祈祷師は雨が降るまで雨乞いをし続けるから。恋愛成就も雨乞いも、最も大事なのは〈執念〉なんです――。
ここで、会場から笑いが起こる。
今年最後の「恋愛成就セミナー」を私は、いつもの話で始めた。聴講者らの気持ちをほぐすためだ。
すると、ひとりの男が声を発した。
「二番めは何ですか」
彼は二番めの要素を知りたいのではない。彼自身が持っているものを、恋愛を成就させうるアイテムとして挙げてほしいのだ。私の答えに案の定、彼は続けざまに「次は、その次は」と訊いてきた。
ところが、いくらやりとりを重ねても、質問は終わる気配がない。彼は、私が挙げたものを何ひとつ持ちあわせていなかった。やがて質問は二十を数え、三十を超えた。
会場の空気も冷ややかになり、とうとう、質問は四十を超えた。
それはまさしく執念だった。
来年こそ彼にも天使が舞い降りるかも――そう思わせるくらいの。