噛ませ犬ごはん|毎週ショートショートnote

両親とも仕事で遅くなるという夜、ぼくは友だちのリョウタの家で夕食を食べることになった。

茶碗には白いご飯がふたくち分くらい入っている。それを箸でつまんで口に入れると、なんかちょっと変わった味がした。――けっして「おいしい」とは表現できない味。子どものぼくにもわかるくらいの。

見ると、リョウタは自分の茶碗にみそしるをドバッと入れていた。

「〈ネコまんま〉はダメって言ってるでしょ!」

リョウタのお母さんが嫌そうな顔をしたが、リョウタは聞こえないというふうにアッと言う間にそれをかき込んで、おかわりと茶碗を差しだした。

すると今度は、茶碗いっぱいのご飯がよそわれて出てきた。

ぼくも残りを口に放り込んで同じようにすると、同じように普通にご飯が出されてくる。食べてみると……おいしい!

さっきのとはぜんぜん違う!

「こっちが本番。母さんこそ、いいかげんにやめてほしいよ、〈噛ませ犬ごはん〉」

リョウタがにらむように言った。