男子宝石|毎週ショートショートnote
友人のおなかの中に新たな光が宿った。見た目はまったく変わらないので、「そろそろだろうな」と言われるまで僕は気づかなかった。
「男子か女子かはもう、わかってるの?」
僕は訊いた。
「ぜんぜん」
「出てきたのを見ればわかるのかな」
「オレには無理だな」
と、友人はふうと息をつくように言った。
「まあ、コイツを取り上げてくれるその道のプロにはわかるってことなんだろうさ。てゆーか、俺にはコイツに男女ってのがあるのかもわかってねーし、そもそも俺自身、男なのか女なのか、も」
「それは僕も同じだけどね」
僕は苦笑した。僕だって自分のことも、僕らの中の彼や彼女のこともよく知らない。わかっているのは、少なくとも僕らや彼らに「男」という定義が存在するらしいということだけ。
僕たちを手塩にかけて養い、僕たちから取り上げた彼らが大きく、まるく、美しく輝くように育っているのを見た人間たちが口々に言うのだ。
これはすばらしい、これでおまえも男の中の男だ、と。