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NTRer「宇宙からのおとし玉」

藤子・F・不二雄先生の宇宙からのおとし玉

この作品は、少年向け雑誌である別冊コロコロコミックに掲載されたもの。

主人公は、お年玉が少ないことや映画に行きたいこと、ラジコンヘリを欲しがるなど、普通の少年らしい悩みを抱えて日常を過ごしている。
そんな中、可愛らしい見た目の宇宙生物と遭遇する、藤子ワールド。
その裏で、かつて手を繋いで一緒に学校へ通ったミッちゃんは
話のおもしろい大学生の家庭教師と、キスをし婚約していた。

。。。
。。。
。。。

かつてならそのまま読んでいたけど、
まあ、それだけで済んでるわきゃないよね、と。


改めてNTR喪失感の仕掛けをなぞっていく。

幼馴染のミッちゃんの変化を、ばくぜんとした不安に感じている主人公。

サーフィンにスキーに、おもしろく話する大人を感じさせる大学生。

彼に夢中で、主人公が目に入らなくなっているミッちゃん。


「行こうか」
「行きましょう」

おそらくこの夜

二人はなお離れがたく、路上でキスをし、
「しかられたって平気よ」と言う。
この恋する表情もたまらない。


背伸びして、大人な彼にメロメロなミッちゃんと
誠実な言葉をかける彼。


彼は実は、妻子持ちのヤリ○ン。
ショックを受け「ワーッ!」と泣きながら家へ帰るミッちゃん。

「そういう」描写は一切ないが、濃厚なNTR構図。
こどもな主人公と、背伸びしたミッちゃんと、ヤリ○ンの大学生に
宇宙生物のタマゴンが介入した形。


傷つき、泣き通したあと、ふたたび主人公に声をかけたミッちゃん。
背伸びを反省した後、主人公に声をかけるあたり、二人の絆の深さが窺える。
爽やかな読後感が残る。


しかし、この後ミッちゃんと大学生が再会した場合、ミッちゃんが再び大学生の甘い言葉にほだされる可能性も考えられる。

「彼女らは、勝手にぼくと婚約したと言って、困ってたんだ」
「……ウソ。」
「ウソなものか。ぼくが一生愛しつづける女性は、きみ一人だよ」
「……信じて、いいの?」
「もちろんだとも!」

そして再び、ミッちゃんは大人の世界に引き込まれていく。こんどはタマゴンはおらず、主人公の取るべき選択とは。
これが大人への一歩なのか、それとも繰り返される過ちなのか。
藤子・F・不二雄先生は、子供向けの作品の中に、成長と喪失、そして人生の複雑さを巧みに織り込んでいた。

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