本当の自分

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あむちゃんは歴代のくぴぽメンバーの中でも1番我が強くプライドの高い女の子でした。
納得がいかない事があれば正しい事や間違ってる事を問わず常に理由や意図を聞いてきては私とはずっとお互いに意見を戦わせてきたように思います。
正直に言っちゃうと、とてもめんどくさいメンバーでした。

しかしその分、情に熱く持ち前の正義感で私を含めたメンバーに頼られた時の真っ直ぐな優しさはみんなを包み込みとても女前で頼りになるメンバーでした。

そして何より彼女はとても繊細な女の子でした。
普段は気丈に振る舞っていますがふとした瞬間にそれはボロボロと剥がれ落ち、気弱な発言をする事もしばしば。
最近では「本当の自分」と「求められている自分」どちらを優先するべきかをずっと悩んでいたようでした。
私は「どちらもあむちゃんであって、君の思う本当の自分を(ベースに)お客さんに求めてもらえやすいような形に演出していくべきだ」と彼女に言いました。
それが正しかったのかは分かりませんが「ありのままの君で良いんだよ」だなんて無責任な事は私には言えませんでした。

くぴぽに加入した当初は周りのメンバーの強烈な個性を前に何も示せず新メンバーという印象しか残らなかった彼女とはこれまで幾度も作戦会議をしてどのように自分なりの個性を出していくか色んな事に挑戦させてきました。
何度も挫折がありながらも、やっとこの数ヶ月でその努力の種が少しずつ実を結び、これでやっとスタート地点に立てたと思っていた矢先に彼女から辞めたいと告げられました。

「自由に見えるものは思ってるより不自由で、不自由に感じてるものは思ったより自由なんだよ」と私は彼女に伝えました。
私はくぴぽを離れる意志を固めた彼女に対する悔しい感情と悲しい感情と許せない感情を押し殺しながら説得しようと思いましたが、もう彼女の意見が変わらない事はこれまで長く付き合ってきた私自身がよく分かっていたのでその場では淡々と受け入れました。
お互いに答えの無いそれぞれの正義を戦わせ続ける事に疲れたのかもしれません。

彼女と出会ったのは約5年前。
お客さんが2人しかいないステージの上で彼女が歌ってるのを観たのが始まりでした。
観ているだけで悲壮感が漂う環境の中でBiSHを真っ直ぐに歌うその声はお世辞にも上手いとは言えなかったけど、それでも瞳からは確かな意志が伝わってきて忘れかけていた(地下)アイドルの原体験を思い出させてくれました。
私はその感動が忘れる事ができず数年後に彼女をくぴぽへスカウトしました。

彼女は「まきちゃんのせいで辞めたと思われるのは不本意だから、卒業するまで私は本当のまきちゃんの事をちゃんと伝え続ける。」と言ってくれました。

私は正直もう心が折れていました。
メンバーが辞めるたびに起こるお客さんからの心無い陰湿な誹謗中傷は今も尚続いており、自分が100%悪くないとは言えませんがそれでもこんな事をされなきゃいけないのかとライブハウスに行くのが辛くなるほど私は疲弊していました。
きっと今回も「またか」という文字を何度もSNSで見るという事は想像に難くなく、もうこのままいっそのこと解散した方が楽になるんじゃないのかと真剣に考えていました。

しかし、私にはどうしても「まこと」「しゅり」「うの」の3人を見捨てるような勇気は持てませんでした。
それぐらい彼女たちは私が作っているくぴぽを信じ生きがいにしていて、不器用なりにも全てを懸けて注ぎ、何度も私と共にくぴぽでいたいと言ってくれました。
私がいなくなったらこの子たちのあの笑顔はどこに行ってしまうんだと思い改めた私は新メンバーオーディションの準備と2月のあむ卒業公演に向けて制作の人に相談をして、大阪と東京で空いているライブハウスが無いか探し始めました。

コロナの影響でライブが無くなり予定よりもデビューは遅れましたが準備期間も含めてあむちゃんは約2年間くぴぽの為に尽くしてくれました。
アイドルの期間としては長くも無く短くも無いかもしれませんが、看護師への道とくぴぽを天秤に掛けてくぴぽを選んでくれた責任を果たせなかった事に改めて申し訳無く思います。
過去の辞めていったメンバーに対してもくぴぽがもう少し売れていたらもうちょっと長く楽しく活動を続けられたんじゃないだろうかとたまに思い出しては自分を責める事もあります。
きっと私はこれらと一生戦い続けなければならないんだと思います。



あむちゃん。
あむちゃんは「求められている自分になる為にどうしたらいいか分からない」といつか言ってたけど、まきちゃんはあむちゃんの言う「本当の自分」というのがずっと分かりませんでした。
アイドルって自分というものを見つける期間だとまきちゃんは思っています。
あむちゃんの言う求められている自分ってまきちゃんが求めてる自分だったのかもしれないね。
まきちゃんはね、あむちゃんが少しでも自分で自分というものを見つける為の手助けがしたかったんだよ。
昔から人の良い部分を見つけるのが得意だったからさ、あむちゃんの良い部分をたくさん見つける為に色んな事に挑戦させてたつもりだったんだけど、きっとそれはとても残酷な事をさせていて疲れさせてしまったよね。

あのね、本当のあむちゃんっていうのは自分の中には無いのかもしれないよ。
それってまきちゃんやメンバーや応援してくれてるファンの人たちや家族やお友達、君を愛してくれているみんなの中にあるんじゃないのかな。
それはどういう事かってのをまきちゃんはね、卒業の日まででもいいから考え続けてほしいな。

まきちゃんはね、自分以上にあむちゃんをプロデュースできる人間はいないと今でも思ってるよ。
だから今はまだ卒業後のあむちゃんを素直に応援できないけど、自分で自分のやりたい事を見つけて成りたい自分で表現できたらそれは本当に素敵だと思うし、どうせ君はもう止められないんでしょ?まきちゃんが決めた事に納得いかなくて何回も食い下がってきては怒らせてきたあむちゃんだもんね。もうこれからは誰も君を止めないよ。
いつか数年後「まきちゃんが間違っていたよ。ごめんね。」と言えるような日が来る事を心から願っています。



ファンのみなさん。
ごめんなさい。
また私の力不足でみなさんを悲しませる結果になってしまいました。
もう自分が恥ずかしくてこれからも応援してくださいだなんて都合の良い事を言うには勇気が要るし、みんなの前に立つのも正直に言うと今はちょっと怖いです。
とにかく今は「あむ」「まこと」「しゅり」「うの」の4人が少しでも楽しくアイドルとして過ごせるように彼女たちの為に尽くしたいと思います。
私が4人の為にできる事なんて限られていますが、あむちゃんが卒業するまで。そしてその後の新しい体制。精一杯自分なりにできる事を頑張っていきたいと思います。
こんな私でも応援してくれる人がいる限り。みんなに少しでも笑ってもらえるように。
私はこれからも色んなことを背負い続けながら考え続けながら生きていくんだと思います。
それでもここで生きることを選びました。
こんな私ですがどうかみなさまこれからもよろしくお願いいたします。



服部真希

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