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糸島の顔がみえる本屋さん、オープンして半年

早いもので、糸かお(糸島の顔がみえる本屋さん)を開業して半年が過ぎた。夢中で走っているうちに、あっという間に半年が過ぎたという感覚。おかげ様で今のところ、想定以上に順調なスタートを切れた、と思っている。

なんとなく、そんなことが起きたらいいなあと願ってはいたものの、ぼんやりとしていたことが、実際に糸かおをやってみて「こんな素敵なことが起きた! 嬉しい&やってよかったな」とはっきり感じられた。今回は、その中からいくつか紹介したいと思う。

ひとつは、糸かおが、本棚オーナーさん同士、本棚オーナーさんとお客様、そしてお客様同士の交流の場、コミュニティになっているということ。それは、糸かおの「店舗」という場でも起きているし、本棚オーナーさんたちがつながるSNS上のスレッドやグループを通じて起きていることもある。お客様の中には、「常連さん」が何人もいらっしゃる。もちろん、「本」も楽しみに来てくれているのだけど、それだけではなく、本棚オーナーさんとのおしゃべりや、まだ見ぬ他のお客様との新しい出会いも期待してくれているのではないかと勝手に思っている。それが、とっても嬉しいのだ。糸高14回生の皆さんのように、毎月14日をお店番の日に決めて、そこで「プチ同窓会」をやってくださるグループがあったり、お店番の義務のない遠方オーナーさんが、わざわざ糸島まで足を運んでくださり、終日お店番をして、そこでの出会いを楽しんでくださったりといったことも起きている。

また、本棚オーナーさんの「自主性」にも嬉しい驚きを感じている。昨年秋、商店街のよりみちマルシェに参加したときに、企画・運営メンバーを募ったら、何人もの方が手をあげてくれた。大堂さんや私がほとんどかかわらない形で自主的に本を集めたり、陳列の仕方を考えたり、店頭での販売を担当したりしてくださった。そして、今年4月から「ラヂオいとしま」で、糸かおオーナーさんをMCにして始まる新番組「本を読もう!」の参加メンバーと、インスタで本棚を紹介するメンバーを募集したところ、どちらもすぐに、数人の方が参加してくれた。イニシアチブをとりながら積極的に進めてくれており、本当に心強い。

それから、糸かおの「場の力」みたいなものが、他の面白いものをひき寄せてくれている。これもやって良かったと思えるところだ。これは、正直、やる前にはまったく想定していなかった。軒先で、月曜日にケータリングケータロさんのお弁当の販売が始まったり、やはり軒先で、週数回、コーヒーの屋台、コココーヒーが出店することになったり。月旦眞龍さんが、数年前まで販売していた菓子舗苑田の最中「伊都の鏡」を復刻するにあたり、常設販売場所として糸かおに声をかけてくださり、店内で販売をお引き受けすることにもなった。なお、軒先で実施される各イベントは、糸かおが入居している、MBS(MAEBARA BOOK STACKS)の後原さんのアイデアで実現していて、糸かおが何か積極的にかかわっているわけではない。後原さんの発想と実行力は、ほんとに素敵で、糸かおとしてMBSにかかわれることは、とても幸せなことだと感じている。

まだまだあるが、あとひとつだけあげることにする。「糸かお」が、本棚オーナーさんにとって飛躍のための、「おためしの場所」になりつつあること。これも嬉しい! その代表格と言えるのが、九大共創学部1年生、中田健太郎さんの事例。彼は糸かおのオープン直後に、本棚オーナーになってくれた。誰かのつてというわけではなく、メディアか何かで糸かおを知って、飛び込んできてくれた。初めはおとなしい人だな……という印象だった。ところが、秋に糸かおの店頭でコンサートをやったとき、音楽好きだと言う彼が、飛び込みで演奏をしているのを見て、印象がガラッと変わった。そして、数か月も経たないうちに自分所有の古本を売るだけでは飽き足らず、小規模でも仕入れのできる出版社を開拓して新刊本を売り始めた。誰に相談するでもなく、気づいたら実現しているその実行力に舌を巻いているうちに、今度は、MBSの2階スペース(つまり糸かおの真上)に友人と「本と洋服の店」を開店するというではないか! この間、約半年。なんという成長のスピード。ちなみに、ここに中田君が開業することができた裏には、ご本人の成長に加え、MBSの応援、そして糸島商工会のチャレンジショップという応援もあったとのこと。糸島、素敵だ。

中田さんの中にある潜在力が開花している。まだまだ大きくなる予感しかない。でも、その開花の小さなきっかけに糸かおがなっているのだとしたら、こんなに嬉しいことがあろうか。他にも、絵本屋さんを開きたいという夢を持った方が、はじめの1歩として糸かおを選んでくれた。彼女の本は、お客様にとても支持されていて、既にいろいろなところから声がかかっている。彼女が糸かおを卒業する日も、まもなくだろうなあと嬉しい気持ちで見守っている。

東京にいる頃、起業というと、何かとても大変なことだと思っていた。でも、糸島にいると、自分が好きなことを好きなように始めるというのはとても自然なことに思える。そんな素敵な人がいっぱいいる糸島。その地で、糸かおも、そんな人たちの背中を押す、ひとつの場所として存在していけたら素敵だなと思う。

ちなみに、中田さんのチャレンジは、福岡のローカルテレビ、KBSの「アサデス」で取り上げられた。糸かおも紹介してもらっている。とてもわかりやすくまとめていただいていると思うので、ここにリンクを貼っておきます。よかったらご覧ください。

<文責:株式会社まんま 代表 中村真紀>

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