余白が活かされている街(辰野町)
下諏訪郡辰野町は、日本の中心かつ、「南信」「伊那谷」と呼ばれる地域の最北端に位置する、人口2万人弱の小さな町だ。商店街には、シャッターが閉まっている店舗が多い。一方で、リノベーションによって生まれ変わった店舗がポツポツと点在している。
今回、用事の前に立ち寄ったカフェ「ハイファイブコーヒースタンド」も、そんなリノベ店舗のひとつ。松本に本店があるおしゃれカフェで、辰野店がオープンすることを知ったときは驚いた。
グリーンをぐるっと取り囲む六角形のテーブル席に座り、ラテアートが描かれたカプチーノをちびちび飲みながらボーっと窓の外を眺めていると、女性一人、男性一人、女性二人組など、ポツリポツリとお客が入ってくる。知り合い同士なのか「久しぶり、元気?」なんて会話をするお客同士もいたりして。このリノベおしゃれカフェは、もうすっかり町に馴染んでいるようだ。
辰野町は、アーティストインレジデンスに登録して国内外のアーティストの長期滞在を受け入れていたり、町全体を美術館に見立てた”トビチ美術館”というイベントを行なったりと、空き家や空き店舗を活用した取り組みを行っている。こうした空き物件が辰野町に増えた背景には、1983年から特急あずさが停車しなくなったという事情があるらしい。なるほど。(というか、辰野町にあずさが停まっていた時代があったなんて!)
空き家・空き店舗というのは全国的にも大きな問題となっているけれど、この余白は、発想次第で人を呼び込むチャンスにもなる。余白があるからこそ、クリエイティブの余地が生まれる。辰野町の10年後、20年後がどうなっていくのか、隣の隣の町から観察を続けていきたいと思う。