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#50 This is Africa?

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

マラウイの首都リロングウェで、ロスト・バゲージにあった荷物をようやく受け取った私は、ンカタベイに移動する前に、たまった洗濯物をいっきに処理してしまおうと、宿のランドリー・サービスを利用することにした。

雨季がまだ明けきらず午後になるとザーッと雨が降ることが多かったので、ちゃんと乾くかどうか心配だったわたしは、宿の掃除や洗濯を担当している女性に「明日の早朝にチェックアウトしたいけれど、今晩中に頼んでおいた洗濯物を受け取ることはできる?」と確認した。
「OK! まだ湿っているから、夜までにアイロンをかけておくわ!」彼女はそう言ってくれた。この女性、偶然にわたしと同じ名前の持ち主だった(まさかマラウイで同じ名前に出会うとは思わなかった)。彼女から名前を聞かれて答えた時に「You are most welcom!」と言ってくれて、それ以来、いつも満面の笑顔で挨拶してくれる女性だった。

その晩レセプションに洗濯物を受け取りに行くと、まだ届いていないとのこと。わたしが今晩受け取る約束だったと伝えると、そこにいた男性が確認するために洗濯室に連れて行ってくれた。
行って見ると、わたしの洗濯物は無造作に積み上げられたまま。おまけに心配していた通り、まだナマ乾き。というか、しっかりと水分を含んだ状態。

「悪い予感が当たったなぁ…」とゲンナリしつつ、「昼間のうちに確認したら、アイロンをかけてくれると言われたの」
「明日の朝早くにチェックアウトしたいから、今日中に受け取りたい」と再び訴えると、その男性は何度もわたしに謝り、「係りの女性は今日はもういないから、僕の友人に頼んで今からアイロンをかけてもらうから」と言ってくれた。
彼のせいではないのに…と申し訳なく思い、わたしも謝ると、「君には明日、気持ちよく旅立ってほしい。そしてまたここに戻って来てほしいから」と笑顔で言ってくれた。

その後、あまり催促するのもどうかと思い3時間ほど経ってから再びレセプションに行くと、さっきの男性の姿はなく、この宿のオーナーがいた。
このオーナーがまたクセモノで、わたしが日本人だと分かって以来、顔を合わせる度に「君のことをもっと知りたい」とか、「君と一緒に日本に行きたい」とか言ってくるかなり厚かましい奴だった。わたしが顔をしかめながら洗濯物はどこかと尋ねると「ここには無いから」と言って、またさっきの洗濯室に連れて行かれた。扉を開けた途端すぐに、さっきと全く変わらない状態で積み上げられたままのわたしの洗濯物が目に入った。

この時点でわたしのゲンナリは頂点。
その油に火を注ぐかのように、オーナーがニヤニヤしながら「Come on my wife♪」と言ってきたのを聞いて、ついにプチっ。
「わたしは今すぐ洗濯物を受け取りたいの!」「あんたが今すぐ何とかしなさい!!」と叫んでいた(一応これを英語で)。これまで彼の戯言を苦笑いで受け流していたわたしが突然ブチ切れたのに驚いたオーナーは、背筋をピンとして「Ok…」と弱々しく答えた。

アフリカを旅していると、多かれ少なかれ似たような経験にぶち当たる。
そこで、こちらがどんなに腹を立てても得るものはなく、“This is Africa”と受け入れるしかない。けれども不思議でならないのは、最初の女性にしても次の男性にしても、はなからわたしに嘘をついたり騙そうと企んでいたわけではないだろうに、どうして約束したことを(それもかなり調子のイイ口調で)すぐに実行せず、放置してしまうのだろうか?
しかも今回のことは彼らの無償の親切心を期待したものでは無く、こちらが対価(洗濯代)を払って当然に受け取れるべきランドリー・サービスなのだ。

モノやサービスを売ってお金を得る立場にある者として、彼らに責任感やプライドは無いんだろうか?そんな風にその場しのぎのことをやっていたら、いつまで経っても進歩や発展を享受することはできないんじゃない?怒りと幻滅と共に、そんな思いが頭を満たして、悶々とした夜だった。

結局その晩のうちに受け取ることはできず、翌朝チェックアウト寸前にようやくオーナーから手渡されたわたしの洗濯物は、いかにも「ついさっきアイロンをかけました」と言わんばかりにホカホカと湯気を立てていた。
もうただ呆れ顔だけで何を言う気にもならないわたしに、さすがにオーナーも「my wife」とかふざけたことは二度と言わなかった。長時間バスにゆられて着いた宿で荷物を開けた時、その洗濯物が何とも言えないにおいを発していたことは言うまでもない。

小学校の窓から脱走しようとしている少年??
学校の窓から手を振ってくれた子供たちこ
子供たちの笑顔に癒された
子供たちの笑顔に癒された
子供たちの笑顔に癒された

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