絵描き生活のはじまり
私は昔から絵を描くことが好きだった。
しかし毎日没頭するほど絵を描いていたわけではなく、
小学生、中学生、高校生、大学と、
学生時代は一般の勉強をしていた。
部活動は美術に全く関係のない
バスケットボールを約6年間していた。
恐らく心のどこかでは、
デザインやアートの勉強をしたいと思っていたと思う。
しかし勉強が嫌いではなかったのと
周りのすすめがあって、
進学校に通うことになった。
大学の進路を決めるときに自分の意見を言えたはずなのだが、
そこで私は「周りが勉強してるから」「親が言うから」、
と周り流されるかたちで
美大ではなくいわゆる一般的ないい大学に入る、という道を選んだ。
いい大学。大きな会社への就職。安泰。
いい大学に行かないと失望される。
そんなことが無意識のうちにあった。
おじいちゃん、おばあちゃん、ママ、パパからお金をかけて育ててもらっている。
期待に応えないと失望される。
なんて、勝手に色々背負っていた。
受験勉強は安くはない塾代を無駄にしたくないのと、
周りに失望されたくないがために頑張っていた。
行きたくもない有名大学のために
周りと比較されながら偏差値を競い合っていた。
少し気が狂いそうだった。
そんなこともありながらやっと大学に入ったが、
結局適当なサークルに入り好きな授業だけ受けたりサボったりした。
人間関係も面倒になり、
なんとなく無味乾燥な大学生活を過ごしていた。
しかし大学4年、22歳の春。
とある音楽と出会う。
歌詞が衝撃的だった。
どんな歌詞よりもその当時の自分にあてはまっていてアーティストの歌に込めた想いが、
そのまま私の心に届いた気がした。
その時にふと、
この歌詞の意味を、形にならない想いを
「図」にしたいと思った。
直感のまま、えんぴつでザラっと描いてみた。
結果、図ではなく「絵」になった。
ただ鉛筆でかいた絵。
一見なんの変哲もない絵に見える。
しかし、心を揺さぶる言葉の数々と、アーティストの想い、
そして見るだけで勇気が出るような感覚が
ギュッとつまった絵がそこにあった。
「絵には想いが載せられるんだ」
なんにもアートについて学んでこなかった私が、
絵画の奥深さに気づいた瞬間だった。
この時はまだ、鉛筆で描いた絵にコピックで色を塗る程度。
水彩には出会っていない。
しかし見えないものを形にしていく作業は、
とにかく楽しくて仕方なかった。
その日から家に帰って少しずつ絵を描きはじめた。
平坦でモノクロ、空っぽな日常がガラリと変わった。
絵を描くことで生きることが色づき、
希望の光そのものに思えた。
私はいつしか
「絵を描いて、たくさんの人の心を動かしたい」
そう想いながら絵を描き続けていたのだった。
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