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「ミニシアター・エイドLIVE #ミニシアターと私」配信を観て


最終的に、2,000名弱が同時視聴していた、5月13日の「ミニシアターエイドLive」。リアルタイムで視聴し、そしてこの週末、配信アーカイブを繰り返し見ているのですが、全然飽きません。いまいち言語化が難しい「映画/映画館の魅力」について、多様な立場の方々が、多方面に語られ、本当に学びが多く、映画・映画館が持つ可能性に心が揺さぶられた6時間弱でした。

視聴2周目を完了した時点で、私が得た学びを書き出してみると、ざっくり挙げてもこれだけありました。

・”なぜミニシアターで映画を観たいのか?”という問いへの答え

・映画が持つ魅力と、社会的意義や価値

・映画が”地方創生、国家イメージ戦略の鍵”となる可能性

・日本全国にある、個性豊かなミニシアターの存在と、その源泉にあるもの

**・映画がたくさんの人の心を救ってきたという事実 **

もともと仕事柄、プロフェッショナルな方の仕事インタビューが大好きなので、語り手が映画づくりを生業としていたり、映画館を運営されていたりする映画人だったり、映画を愛してやまない人となると、好き要素しかないLive配信です。5時間50分の長丁場ですが、全然飽きませんし、繰り返し見ていたい配信です。運営されたMotion Galleryさん、深田監督、濱口監督に、尊敬と感謝の思いでいっぱいです。

いつか訪れたい、憧れのミニシアター支配人さんもいらしたし、気になっていたミニシアターも、初めて名前を聞くミニシアターもいらして。そして、どのミニシアターにも、歴史と個性があって、館主さんから発せられる言葉に、大きくて熱い愛に溢れていました。全文を書き起こししたいくらいです。

そんな貴重な6時間弱だったので、私の自由研究的なメモとして、「ミニシアターLive」で得た学びや、ぐっと心臓を鷲掴みにされた言葉などを纏めたいと思います。

あと、もしこの文章を読んで「まだ配信を見ていないけど気になった」という方がいらしたら、気になる部分だけでも、アーカイブ映像を見て頂けたら、とても嬉しいです。ミニシアターについて、こんなにいろんな立場の人が、ダイレクトに熱く語ってくれる催しは、そうそう無いんじゃないかと思います。

YouTube LIVE「ミニシアター・エイドLIVE  **#ミニシアターと私**

2020年5月13日(水)17:00~22:30配信

<ミニシアターエイドLive アーカイブ>

ミニシアターエイド Live #ミニシアターと私  

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1.それでも私は映画館を諦めない(0:13:30〜)

ガーデンズシネマ(鹿児島) 黒岩美智子さん/萩ツインシネマ(山口) 柴田寿美子さん

黒岩さん…(ミニシアターでかかる)映画は、いろんな世界に連れて行ってくれる、人生に関わる映画が多い
柴田さん…18歳の時に言ってしまった”ある一言”がきっかけで、恩返しをしたくて映画館主に。自称「日本一映画を知らない映画館主」/40年目の映画館を繋ぎたいという一心

ミニシアターは”人”が魅力、という言葉を、このミニシアターエイド基金の一連の発信で、しみじみ実感しています。おふたりとも、映画への愛に溢れた素敵な方で、こういった館主産の個性が、ミニシアターの個性となって顕れるんだろうなと思いました。

コロナ禍前から、特に地方のミニシアターは、経営的に厳しい状況が続いていた中での、この状況。けれどミニシアターエイド基金で可視化された、”映画が繋いでくれる絆”が、人の心を奮い立たせてくれるんだなと。お金だけじゃない、言葉や、行為そのものが伝える力があるんだと実感しました。


2.個の力が未来の映画界を支える?市民が支える映画館の未来(0:43:27〜)

フォーラムシネマ(山形をはじめ、東日本10館)長澤綾さん/瓜連あまや座(茨城県)大内靖さん

長澤さん…(シネコンが参入してきたら厳しい状況になるので)自分達が先にシネコン化してしまおう。莫大な費用はかかるけど「作っても地獄だが、作らなくても地獄が見えている」という選択肢に迫られた末の設立/お客様から「フォーラムのない生活は考えられません」というたくさんの声。アート系の作品が上映したくて経営していることが伝わっているんだなあと/お客様をがっかりさせない仕事をしないといけない。市民が集まってつくったフォーラムならではなのだろうと思う/今回のクラウドファンディングを通して、映画館は、無くなってはいけない生活のインフラだと感じた
大内さん…スーパーの跡地の駐車場に新築で設立された、31席の映画館/クラウドファンディング時の言葉【可能性を諦めさせない地方】/シニアの方が多く「クラウドファンディングのやり方がわからないから」とお金を封筒に入れて持ってきてくださったり

フォーラムシネマ・ネットワークの存在を、今回の配信で初めて知りました。”フォーラムは、日本で初めての市民出資による「市民の映画館を建設する会」から生まれました”(公式サイトより)。成り立ちが凄いな、熱いな!と痺れました。私は広島出身なので、なんか親近感を覚えてしまいました(市民球団)。笑 

今、自分は神戸に住んでいて、徒歩圏内にいくつものミニシアター、シネコンがあり、いつでも気軽に映画館に立ち寄れるし、観たい新作映画は、だいたい見ることができる、という恵まれた環境にあります。でも広島に帰省すると、「映画を観に行くこと」というのは、なかなかの”お出かけ”になります。それでも八丁座さんや横川シネマさんが居てくれるから、ミニシアター系の映画も観れる。でも、こうしたミニシアターが無ければ、シネコンでかかるような大作映画しか観れないんだろうなと、それが地方の現状なんだと実感しました。

フォーラムシネマさん、あまや座さんの成り立ちを聞いて、そうした地方の方々の、”映画を諦めたくない”という、切実で、強い想いを感じました。そういう歴史を、今、共有していただけることは、すごく意味があることだとも。


3.#ミニシアターと私/茂木健一郎さん(1:13:00〜)

特に地方在住の人にとっては、ミニシアターが映画との出会いになっている。これからの日本はいかに地方の文化を豊かにするかが鍵になる。ミニシアターは地方において「ここに同好の士がいる」と感じられるコミュニティの場であり、人生の支えになる
映画館で観る体験は、配信と違い、クオリア、質感、感動も違う。同好の士と観るという経験は、お金には変えられない
映画の裾野を拡げる意味で、ミニシアターは生活インフラである
映画は国の文化を発信し続ける=国のイメージ向上の発信基地となる。芸術としての映画を、国家戦略として考えるべき
ミニシアターがキュレーションとして映画のラインナップを作り、観客はそれを信頼して映画館に通う=顔が見える。ミニシアターは、映画芸術を育む”ゆりかご”である

茂木さんと、深田監督、濱口監督のトークは、すべてにおいて激しく同意!としか言いようがなかったです。”映画館で映画を観る体験”が、配信とどう違うのか、冷静に捉えることができて、改めて価値を思い知りました。

また、映画を通して他国の状況や、多様な価値観を知ることができる。それは自分のインプットとしてもそうだし、日本という国の魅力を、他国に発信していくための、国家的なイメージ戦略として取り組むべき、という提言にも完全同意です。私は先日、元町映画館で、ウォン・カーウァイ監督の「欲望の翼」を観て、この”1990年の香港”の時間そのものが、この1本に凝縮されているその文化的価値について、思いを巡らせていました。映画としてアウトプットされたから、2020年の今も、あの頃の香港の魅力を思い起こすことができる。国に住んでいないとわからない空気を、他エリアへ、未来へ届けることができる。それは映画が持つ、独特の魅力だなと、改めて思いました。

深田監督が何度か、「日本では、フランスや韓国と比べて、映画文化に投資されていない」と仰っていましたが、改めて、国家レベルで取り組む価値があると感じています。


4.#ミニシアターと私/片渕須直監督(1:28:00〜)

「マイマイ新子と千年の魔法」上映時、ラピュタ阿佐ヶ谷との思い出。恩返し。「この世界の片隅に」は2016年公開以来、2020年4月24日の1日を除いて、必ず日本のどこかの劇場で途切れず上映され続けている。ミニシアターでの上映後サイン会での観客の感想の言葉が糧になる
映画は消費されず残っていくものであってほしい、何度見ても角度を変えて新しい発見ができるような作品を作りたい
映画は映画館という空間で観てこそ、空間を捉えることができる、画面と音だけでなく、新しい次元が映画の上に重なってくる

私の祖母が呉出身で、「この世界の片隅に」を観た時、すずさんの話し方が、祖母と完全一致していて感動したんだよなあ…なんて思い出していました。祖母は2年前の春に亡くなったのですが、元気だったら、一緒に観に行きたかったな、などと思いました。

「映画は映画館で観てこそ」という言葉に、そうだよなあ、きっと作り手は、映画館で観てもらう前提で作品を創造しているのだから、配信で鑑賞するということは、もしかしたら受け取るメッセージングも70%くらいなんじゃないかな、と思っています。(映画館並みのホームシアター設備を整えられたら別ですけども)

常々、最高の映画は、映画の為の最高の環境で観ないと失礼だと思っています。配信で観るっていうことは(言い方はあれですが)丹精込めて作られた映画を消費しているようなものだなと、消費しながらも、勿体なさを感じています。見逃していた作品に再会できたり、過去の映画を遡って観ることもできたりで、配信サービスも大きな価値があると思っているのですが、それでも、映画館で観ることがデフォルトの状態でありたい。


5.まちで映画文化を育む、映画文化でまちを育む ver.1(1:47:40〜)

シネマテークたかさき(群馬県) 志尾睦子さん/高田世界館(新潟県)上野迪音さん

志尾さん…「映画館、映画祭があるところに住んでいることが嬉しい」とよく言われる/無くして欲しくないと声を上げてくれたことが、なにより、すごい力になっている
上野さん…建物に関心を持って訪れる方が熱心にSNSなどで発信してくれ、徐々に熱気を孕んでいった/自分は”映画原理主義”。上越の人達が映画で幸福になればいいなと思っている/もっと映画関係者が言葉にしていかないと/初老の男性から言われた「ここが無ければこの土地にはいなかった」
深田監督…世界館という名前が素晴らしい。映画は世界を知る元である、他者を知る元である

高崎映画祭のアットホーム感。受賞時の達磨を掲げる深田監督がチャーミングでした。”映画祭”というイベントは、私は未経験なので、俄然、興味がわきました。志尾さんが仰っていた「映画館がある場所に住んでいることが嬉しい」という言葉が、しみじみ沁みます。今まで、なんて恵まれた環境に居れたんだろうと。同時に、今、行動しなければ、取り返しのつかないことになってしまうという恐怖も感じています。

シネマテークたかさきさんも、高田世界館さんも、昨年、元町映画館で上映された「世界一と言われた映画館」鑑賞後のトークイベントで知りました。この作品は、40年前、山形県酒田市に存在した「グリーン・ハウス」という、地方に存在した素晴らしい劇場のトリビュート・フィルムですが、鑑賞後は「地域を育てる映画館、地域が育てる映画館」というテーマで、大変学びの多いトークショーでした。この時、酒田市港座さん、高田世界館さん、上田映劇さん、シネマテークたかさきさんのことを知って、いつか訪れてみたい、ミニシアターで鑑賞することを目的にした旅も面白そうだなと思ったのです。

それまでは、自分の居住地の周辺にある、ごく限られたミニシアターのことしか知らなくて(多くの人がそうだと思いますが)、けれど、こんなにも、土地に根差した、個性的で素敵なミニシアターが、たくさんあるということに、とてつもない魅力と可能性を感じたのでした。「映画館を訪ねる旅」、実現したいなあ。

その時は、こちらのサイトの「全国ミニシアターマップ」を参考にさせてもらおうと思っています。スタートが楽しみだな。

(そして松坂桃李さんが大好きなので、この番組は見たい…!)


6.地方都市で映画の多様性を守ること(2:18:30〜)

名古屋シネマテーク(愛知県)永吉直之さん/ディノスシネマズ札幌劇場(北海道)横澤康彦さん

永吉さん…若い作家の映画を掛けないと、次に続かなくなってしまう/映画館は逃げ場所だったし、新しい世界が開く場所でもあった
横澤さん…旧劇場が閉館した際「札劇が無くなったら困る」と言われた、札劇が無くなることで北海道で観れない作品が出てきてしまう/映画を観終わった後のお客様の顔を見るのが好き
MOTION GALLERYアーヤさん…これだけ多くの立場の方が応援しているのは、映画関係者はみんな運命共同体だから
濱口監督…映画館で映画を観るということは、ほんのすこし現実を断ち切り、違う自分に、新たな自分になる場所

ミニシアターでかけてもらえる映画は、シネコンで観る大作系映画と違って、必ず”学び”があるように思うのです。振り返ってみると、「観なきゃよかったな」と思った映画に出会ったことがないです。必ず何かしら、2時間の暗闇の中で得られる”学びや気付き”、”新たな知見”がありました。

だから、自分ごとで言うと、元町映画館さんや、シネ・リーブル神戸さんが無くなってしまうと、本当に困る。知りたい世界や知識がまだまだあります。特に、意識して動かないと世界と繋がりにくい時代になってしまった今だからこそ、余計にそう思います。


7.#ミニシアターと私/矢部太郎さん(2:44:22〜)

ミニシアターは避難できるシェルターだし、いろんな世界を知ったり、勇気を得られる場所
ミニシアターは、口には出さなくても、「今日すごいの観たな」っていう想いを周りの観客と共有しているような感覚になる、そういうのが良い

鑑賞後の「今日すごいの観たな」っていう静かな興奮、めっちゃわかりすぎて頷きまくってました。笑 鑑賞前は、周囲に座っている観客に対して何も思わないのですが、エンドロールが終わって、明かりが点いた時、立ち上がる人々がまるで同志みたいに感じられて。2時間の感動を共有した、同じ価値観を共有できた仲間のように感じられて。

話しかけたいような、熱いモヤモヤした気持ちをかかえて外に出ると、作品のポスターをじっと見つめる人や、写真を撮っている人がいて、わ、わかる…!最高でしたよね!!と、心の中でめっちゃ語り掛けています。また映画館に行けるようになったら、いつか話しかけてみたいな。不審がられないかな。


8.世代もバックグラウンドも知識の量も関係ない。多様なひとたちで「共有」するから映画はおもしろい(3:00:30〜)

桜坂劇場(沖縄県)下地久美子さん/第七藝術劇場(大阪府)小坂誠さん

小坂さん…観賞後のトークショーを通じて、劇場の意図以上の拡がり、繋がりが生まれていく。監督と観客、あるいは観客同士の交流、人のつながり/観賞後に(マイナス方向で)強く感情を揺さぶられるような出会いがあってもいい、この時代貴重な経験のはず/今回のクラウドファンディングで、映画館はスタッフのものではなく、劇場に来てくれるお客様のものだと改めて実感した
下地さん…いろんな人が足を運べるハコにできれば…映画だけでなく、ライブやワークショップを開催。ホンモノに触れる機会を提供したい/劇場公開されている作品でもつまらないと感じるものはあって、それを上司に肯定された時に嬉しかった、気負わず観ていいんだと思えた

第七藝術劇場さんは、シアターセブンの方に、「人生フルーツ」を観に行こうと思っていた矢先のコロナ禍でした。大阪は、シネ・ヌーヴォさんをはじめ、シネマート心斎橋さんなど、気になっていたミニシアターがたくさんあります。

ナナゲイさんの、鑑賞後の「上映時間より長くなることもある熱いトークショー」がめちゃくちゃ気になっています。私は元町映画館さんで初めて、鑑賞後のトークイベントというものに参加し始めたばかりなのですが、参加するだけでも、大きな学びと幸福感を得られました。

かつ、映画作品を通して、地域の人々と繋がったり、新しい輪が拡がっていったりするという可能性に、ものすごく興味を持っています。

桜坂劇場さんの、「映画館が日常的に通う場所になる」取り組みも、すごく興味深いです。同じ価値観を持つ他人と知り合う機会は、学校を卒業すると、なかなか得難いものになります。やろうと思えばできますが、なかなかハードルが高い(時間とコストがかかりがち)。でも、映画/映画館という場では、それが容易く実現できるのかもしれない、と思いました。状況が落ち着いたら、上映後のトークショーに、積極的に参加していきたいです。


9.#ミニシアターと私 小泉今日子さん(3:28:00〜)

20代の頃に通ったミニシアターで出会った作品が世界を広げてくれたし、映画への興味や憧れが強くなった
相米慎二監督の作品に出て、俳優もスタッフと同じ役割のひとつと実感した
ミニシアター公開作品のトークショーで、きちんと映画を観てくれた質問をもらえる、それが若い人だと“この人の未来にとって、この映画は影響を与えたかもしれないな”と喜びがある
若い頃に、映画を観て考えたことが、今の自分の血肉になっている。映画館は無くなってはいけないし、映画を観て考えるということを未来永劫楽しんでほしい

小泉今日子さんの登場にテンション最高潮になっている深田監督と濱口監督の姿が微笑ましかったです。笑

「この若い人にとって、この映画が影響を与えたかもしれない」という一言が沁みました。映画の感想を呟く為に、鍵無しアカウントのTwitterを始めた結果、監督や俳優の方々に想いが届くことがあり、そういう経験込みで、映画体験がスペシャルなものになっていました。

監督や演者さんに対して、感想を伝えたり、質問できたりという機会を得られるのは、ミニシアターがほぼ唯一でした。今後、井浦新さん達が作られるプラットフォームで実現いただけそうなのが、ものすごく嬉しく、楽しみです。


10.まちで映画文化を育む、映画文化でまちを育む ver.2(3:48:00〜)

ジャックアンドベティ(神奈川県)梶原俊幸さん/林海象監督/中村高寛監督

梶原さん…2007年3月にジャックアンドベティを引き継いだ当時、向かいに日劇があった。映画の舞台にもなったような立派な建物だったが、GW明けには取り壊しも決まり今はマンションに。無くなってしまうんだと。ジャックアンドベティを守っていかなければという想いを強くした
中村監督…黄金町映画祭(横浜みなと映画祭)。海外の映画祭での経験が活きた。地方の劇場のサポーターが劇場公開に関わってくれる、人のイメージが強く、ジャックアンドベティにもそういう映画館になってほしいし、映画祭では(映画人に)街そのものを体験して、街に戻ってきてほしいなと思った
林監督…子供の頃、映画館という暗闇に逃げ込んで、映画という光を観るのが救いだった/黄金町が映画ファンの間で知られるようになった経緯。これが映画の持つすごい力/映画は映画館で観てこそ映画になる。映画館で観ないとそれは映像。映画館にはずっと存在してほしい

林監督の「映画は映画館で観てこそ、映画になる」という最後のメッセージに、ものすごく心が熱くなりました。映画監督から言われる、その言葉の重み。

また、中村監督や林監督から語られた、黄金町の、映画にまつわる歴史が本当に興味深くて。映画を通して、人が、街が育っていくプロセスが、すごく面白い。無限の可能性を感じました。

梶原さんの、”あって当たり前だった存在…ある日、映画館が無くなってしまう”という恐怖を追体験して、ここが踏ん張りどころなんだなと、改めて感じます。

映画って、興味がない人には「贅沢な娯楽のひとつ」であり、興味がある人、生活の一部になっている人にとっては「無くてはならない大切なもの」。でも、興味の在る無しは、とても主観的なものだし、映画好きな人にとっての映画の大切さはとても言語化しにくい(橋本愛さんの応援コメント動画が多くの人の心を動かしたのは、切実さがご自身の言葉で語られていたからだと思う)。そして特にミニシアターは、この後の森崎ウィンさんの語りを聴いていても思うけど、通わない人にとってはちょっと敷居が高い。ここの壁を取っ払う為に、ミニシアター側も、私達サポーターも、もっと頑張らないとなと、気合いが入り直しました。


11.#ミニシアターと私 玉城ティナさん(4:18:30〜)

ミニシアターは日常の中のひとつ。ひとりになりたい時、現実から逃げたい時に行く場所
好きな人と映画を観に行って、全然映画の趣味合わないじゃんってなるのが嫌(だから一人で行く)
覚えている映画、17歳の時に舞浜の映画館に『牯嶺街少年殺人事件』を観に行った、周りがディズニーランドに行っている中、自分はひとりで4時間の牯嶺街を観ていて。いろんなことを考えたし、”残る”1本
スクリーンまで最短で行けるミニシアターが好き。日常と映画の境目が近い。そういう映画館が困っているのが悲しいので、応援したいと思った。これからも映画がそばに居てくれる存在であってほしい

”映画にひとりで行く理由”、わかりみが深すぎます。鑑賞中も、隣の人、楽しんでるかな?と思って没頭できない感じがあるし、「良かったよねー!」と言って微妙な表情されるとつらいな~と思うので、つい一人で行ってしまいます。

17,18歳で『牯嶺街少年殺人事件』を観るのが羨ましすぎます。私は2017年に元町映画館で鑑賞しましたが、3時間56分の上映時間の中で、登場人物たちと同じ時間を生きたような、没入感が堪らないなと思っていました。「象は静かに座っている」も同じ感覚に陥ります。

ミニシアターの魅力で、玉城さんが”スクリーンまで最短で行ける”と表現されていたのですが、なるほどな!と思いました。大手シネコンさんの、”わざわざ行くぞ感”、”映画を観るぞ!と構える感じ”も勿論好きなのですが、別世界に一瞬で没入できる感覚が、ミニシアターには確かにあるな、と思いました。


12.「若者の映画館離れ」って言われたくない、言わせたくない(4:36:00〜)

京都みなみ会館(京都府)吉田由利香さん/加藤るみさん/森崎ウィンさん

吉田さん…若者を呼び込むために始めたオールナイト上映。早朝、映画館から出てきた時のほくほくした表情を見ると嬉しくなる、夜通し、知らない人達と観た映画の記憶がその人の中に残り続けるんだなと思うと嬉しい/作品の宣伝をする時、宣伝文句を読み上げるのではなく、咀嚼して、人間の言葉として届けるのが大事/レンタルして見る映画と、映画館で観る映画は、残り方が全然違う
加藤さん…寂しい時や孤独な時に、映画が自分を潤してくれた、助けてくれた存在/東南アジアの映画が好き。国のこと、社会情勢を映画にすることが多い、それを観て勉強するのが好き/若い人にも、映画館で観ることの素晴らしさを伝えたい/人生の“運命の1本”に出会いに、ミニシアターで出会えたらいいなと思う
森崎さん…ミャンマーでは映画産業が元気/ミニシアターは映画オタクが集まる場所というイメージがあったけど、桜坂劇場の下地さんの話を聞いて“合っている・間違っている関係なく、自分なりの感想を持っていいんだ”と思えた/みんなで作り上げる現場が凄く好き

京都も、出町座さんをはじめ、気になる映画館がいくつかあります。でも京都みなみ会館さんの館主さんが、とても若い方だったのにびっくりしました。そして「Save our local cinemas」のTシャツをデザインされた方なんですね。若い人達を映画館に呼び込もう!とオールナイト上映を開催されているところも含め、ムーブメントの肝の部分にいらっしゃるんだなと、胸が熱くなりました。

オールナイト上映、今まで行ったことが無いのですが、お話を聞いていてワクワクしました。行ってみたい!映画の面白さ×映画館という空間×オールナイトという時間という、高次元な楽しみ方ですよね。一生の思い出になること間違いなしだなあ。京都みなみ会館さんの、過去のオールナイト上映のラインナップを観ると、京都住みの人が羨ましくなってきてしまう。

加藤さんの「映画を観て、海外の社会情勢や生活について学ぶのが好き」という言葉に、激しく同意でした。ミニシアターで学べることは、本当に無限大です。森崎さんのミャンマー映画事情も、もっともっと聴いてみたいです。


13.SAVE the CINEMA with Actors(5:08:00〜)

井浦新さん/斎藤工さん/渡辺真起子さん

井浦さん…新しくつくるプラットフォームが、職業関係なく、自由に集まってこれる場になるといい(オンラインティーチイン、オンライン舞台挨拶をする場所)
斎藤さん…コロナウィルスがきっかけで、各業界や、監督、俳優の垣根を取っ払い、オンラインを通じて一枚岩になれた。これはチャンスだったんだと感じた/海外の映画祭で、ティーチインでのディスカッションを通して、さらに映画が育っていくと感じた/アフターコロナの、アップデートしたミニシアターの在り方を一緒に探っていきたい/言語化できない感覚を空間共有するのが映画の喜び。その日まで、ミニシアターを強固にアップデートするためのアイデアを、みなさんと
渡辺さん…深田監督、濱口監督の頑張りに支えられるように、枝葉が増えるように、行動の場所が広がっていったらいいなと思う

斎藤工さんの「今回のコロナ禍をチャンスに変えよう」というメッセージに、胸が熱くなりました。

今回のことで、改めて知った映画/映画館の魅力と大切さがあり、解決すべきだったたくさんの問題点も明らかになりました。作り手と、場を提供してくれる人と、サポーターとが三位一体となれる場所もできました。withコロナの時代の中、”今まで通り”ではなく、さらに強固になる映画館の未来を作っていくチャンスなんですよね。楽しみです。

まずは状況が落ち着いたら、身近な映画館に通うことは鉄板で。そして、井浦さん達が予定されている”プラットフォーム”も、めちゃくちゃ楽しみですし、積極的に参加していきたいと思います。


14.エンディング

合言葉は「ミニシアターで、会おう!」

記念写真の、皆さんの笑顔が素敵すぎました。何度聴き返しても、都度学びがある、素晴らしい6時間でした!


先週15日夜に最終日を迎えたクラウドファンディング「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」は、コレクター29,926名、総額331,025,487円という、ストレッチゴールの3億円を達成されました。本当に凄い。私も未来チケットのコレクターです。楽しみです!

Motion Galleryの大高さんのnoteを拝読して、さらに胸が熱くなります。後編もめちゃくちゃ楽しみです。「開始57時間で1億円突破」の背後で生まれていた議論とは…。

どなたかが仰っていたのですが、この3万名弱の支援者ひとりひとりの人生に、映画が深く関わっていて。「映画館は無くしたくない」という強い気持ちを抱かせるほどのエピソードが、ひとりひとりにあるんだと思うと、映画って、映画館って、本当に凄いな!と思うのです。

クラウドファンディングがゴールを迎え、これで日本全国のミニシアターすべてが救われたのか?と言ったら決してそうではなく。向こう数年は、withコロナ状態が続く中、ただでさえ”もっと観客動員を増やさないと”と努力されていたミニシアターの方々を支えるには、やっぱりサポーターによる、継続した支援が必要で。

クラウドファンディングや署名も勿論ですが、ご近所や贔屓の劇場それぞれの支援策もチェックせねばと思っています。

俳優さん方が提供してくださる“プラットフォーム”を始め、いろんな取り組みに、積極的に参加していきたいと強く思います。がんばろう。






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