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海沿いのカフェレストラン①

料理人として各地を転々とし30を少し越えた頃、私は同じ市内で海沿いのカフェレストランで働く事になりました。

辺りに民家は無く、数メートル先がビーチと言うロケーション。

「おお…なかなかの立地だなぁ…」なんて思いながら面接を受けたのを覚えています。

それまで私は横浜や銀座、渋谷など激戦区ではありますが、人が集まりやすい立地のレストランで働いたことはあるものの、いわゆるそう言った、

「リゾート地」

のような所で料理を作ったことは無かったのです。

私だけかもしれませんが、一般的な面接のように緊張することはあまり無く

料理人の方も店を品定めします。

自分のやってきたことに合っている店なのか…出している料理のジャンルはどうか…など。

まぁ専門職、いわゆる職人さんですからね。

一週間後、マネージャーさんから「面接の結果なんですが…」

「はい…」

「一緒にやりましょう( ・`д・´)キリッ‼️」

しかし私のテンションは低く(-_-;)

私「あ…えぇ…」

マ「(゜д゜)!?」

実は条件面であまり折り合いがついていなく。

失礼ながら、渋々OKすることに。

働き始めるとやはりと言うかなんと言うか…なかなかの繁盛店(; ゚ ロ゚)

まぁしかしそんなのはお手のもの。

2ヶ月も経った頃料理長に。

結構大きなハコでアルバイトも含め所帯は大人数。

当時、店も出来て数年ですし食器や設備はオシャレ。

さらには海沿いと言うロケーションもあり有名人も多数来店。
テレビの収録やモデル雑誌の撮影、レストランウェディングなどなど…。

目も回る忙しさだったなぁ…( ̄▽ ̄;)

まぁ海沿いと言うこともあり、イベント事などはやはり混みますよね。

夏だけなのかなと思いきや…春も秋も冬も混みました。

忙しい店、所帯の大きい店というのはそれだけトラブルも日常茶飯事。

毎日がさながら戦場のような感じでした。

連帯感というか、ファミリー感はめちゃくちゃありましたがね。

私は年端もいかぬ頃から、いわゆるちょっとした高級店で働いていた事もあり、芸能関係の方や音楽関係、ハリウッド俳優等、名前を聞けば誰もが知っているような方もお見掛けする機会もありました。

ですので、たしかに有名人も多数来店されましたが覗きに行く程では無かったのですが…。

たしか季節は1月か2月のある朝。

出勤時にビーチの方に目をやると、ロケバスが数台…。

そしてビーチの真ん中に白い大きなボードが何枚か敷かれ、上にはグランド・ピアノが。

他の従業員と「おぉ…誰だ誰だ…?」「ロケバスにNHKって書いてあるぞ」

私「おう、時間も時間だ。仕込みを始めるぞ。着替えようぜ。」

そして着替え終わりキッチンへ。

一時間半くらい経った時、ロケバスが撤収を始めました。

「あー、撮影終わったんだねぇ」「そうですね、早かったですね」

「結局誰だったんだべな」「こんな寒い季節にねぇ(笑)」

ロケバスが完全に撤収した後、ビーチの中ほどを歩く三人の人影が…。

二人は女性のよう。そしてわりとフォーマルな感じ。

付き人?マネージャーさん?

「ロケバスって何台もいましたよね…。一人なのにあんなにロケバス来るんすね」

実際は、テレビで見るような人が乗るだけのロケバスみたいな感じではなかったですね。

中継車のような。

近くなってくるんですよねぇ…。三人の人影が。

「あーこりゃ店に来るんだな…」

その頃にはもう営業が始まって数十分。

わりと客席も埋まってきてまして。

「もし有名な人なら一般のお客さんと少し離さないとなぁ…」

従業員達はインカムで相談し始めます。
※インカムとは片耳イヤホンとマイクを着けて話す小型のトランシーバーです。

見えてきました。

なんとまさかのビッグネームΣ(゚Д゚)

わわわわわ……若大将!?

つづく…


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