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1%の確率で発生するリスク

 手術を受けた方ならおわかりになると思う。手術前に医者サイドからいろんな説明を受けるとき、その大半は麻酔や手術で発生するリスクの話だ。医者とすれば、発生する可能性のあるリスクは事前に説明しておかないといけない。どんなに確率が少なくとも。

 たとえば、全身麻酔の説明では、麻酔が覚めないリスクも説明される。だが実際問題それが発生する確率は、ふだん街中を歩いていて宇宙から降ってくる隕石に当たって死ぬ確率よりも低い。実際問題起きない。確率がゼロではない、というだけだ。

 と、タカをくくっていたら、そのリスクが本当に発生してしまった。さすがに「隕石」よりは大きな確率のリスクで、その確率は1%なのだが、その1%が自分の身に起きてしまった。

 膀胱がんのがん切除手術の3日後、膀胱内で大量出血を発症した。きっかけはトイレの大だった。ちょっとイキんだことが原因(と、あとで言われたが、本人はそれほどイキんだわけではなく、少々、便が固かったせいだ)で、膀胱内部の手術跡から大量の出血を発症した。

 土曜日の午後だった。最初は小さい出血だったが、時間が経つにつれ出血量が増え、夜には出血が止まらず危険な状態になり、医師や看護婦が緊急招集され、深夜未明に再手術が行われた。

 その手術が始まるまでの間、出血で尿管がふさがる、ポンプでかき出す、またふさがるの繰り返しで、要するに、尿管結石が断続して発生しているのと同じ状況が繰り返された。

 痛い。異次元の痛み。今までの生涯味わった痛みのなかで、間違いなくワースト1。

 日曜未明の緊急手術は無事完了した。膀胱内の出血箇所は内視鏡の電気「コテ」で焼き固められ、完全に止血された。もう少し処置が遅れていれば、あるいは、土曜の深夜なので、担当医がくつろいでお酒を楽しんで酩酊して手術ができい状態だったら、生命が危なかった。

 出血は完全に止められ緊急事態は回避された。しかし、この措置で膀胱内が焼き固められ膀胱の伸縮性が悪化したのであろう、この手術以降は頻尿がなかなか改善せず、一気にジジくさくなった気がした。でも頻尿なんて命に比べれば大した問題ではないと考え直し、気にしなようにしている。

 1%の確率で発生するリスクなので、たぶんこの先一生遭遇しないだろうから、もう気にしなくていいのだが、この件を経験してから以降、この手のリスク説明を受ける際は、たとえ確率が小さい事象でも真面目に話を聞くようになった。さすがに「隕石」レベルの話は気にしなくてもいいと思うが、1%以上であれば十分現実化する可能性がある。それを十分に思い知らされたわけだ。

 

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