見出し画像

60代でトライアスロンやっちゃいけませんか?

 最近は本気でトライアスロンに取り組んでいる。レースデビューは32歳と昔話になるのだが、仕事や家庭やその他もろもろで長い中断期間を経て、数年前から再び取り組んでいる。

 本来は2021年からレース再デビューする予定だったのだが、がん手術やコロナで止む無く延期。再デビューは2022年のシーズンを考えている。60代をむかえてなぜトライアスロンなのか、ちょっと長くなるが、説明しよう。

 有酸素運動なる言葉が流行り始めたのは私が20代のころからだ。米国西海岸のエアロビクスムーブメントが日本に上陸し、大手が競ってアスレチッククラブ市場に参入した。

 当時、会社の競技スキー部に入っていた。競技の経験はなかったのだが、どうしてもやってみたかったのだ。体を鍛える動機はそれだった。そしてムーブメントに飛びつくことになる。

 アスレチッククラブ(当時はジムとは言わなかった)に入会すると、すぐ「洗脳」された。「有酸素運動」を始め、同時にジョギングや自転車も始めた。会社はブラック自慢で激務奨励だったから頻繁には通えなかったが、若かったので体はすぐ対応した。

 水泳は少しだけ経験があった。小学校の高学年になるとき、のちのち有名選手を輩出する東京スイミングセンター(東京・巣鴨)が近くに出来て、募集チラシを見た母親がなぜか私を入会させてしまった。ここで3年間指導を受けたおかげで正しい泳ぎ方をマスターしたが、それ以降は水泳を部活として鍛えたことはなかった。

 それでも、若さゆえか、ほとんどラントレせずに参加したフルマラソンを4時間5分で走り、友人に誘われて特に専用のトレーニングすることなく出場したOD(オリンピックディスタンス)のトライアスロンも、なんなく完走してしまった。

 そのまま続けていればよかったのだが、仕事はますます激務になり、立場も兵卒から微妙な立場へ変化するにつれ、アスレチッククラブから足は遠ざかり、世の不景気の進行とともに競技スキー部の活動も衰退した。

 時は過ぎ、50代の半ばを迎え、自分の時間が持てるようになってきた。会社では管理職ではあるが既にリーダーシップを発揮する立場ではなくなっていた。正直言って、やる気も失せていた。はっきり言えば、富士通にいること自体イヤになっていた。

 お決まりのコースで、そうした社員には早期退職制度が用意されていた。考えた末、私は富士通を辞めてもっと面白そうな会社に転職するとともに、自分の時間を大切にする道を選んだ。

 そんな時間を過ごしていると、若かりし頃のキラキラとした想い出が心の中で蘇える。もう1度トライアスロンに出たいという気持ちが心の中に湧き始め、しだいにどうしても抑えがたいものになっていた。

 少しずつではあるが、情報を集めトレーニングらしきものを手探りで始めた。地元の競泳サークルに参加し、バイクトレーニング用にダイレクトドライブのスマートトレーナーを購入した。今流行りのZwiftはこのころから開始した。

 50代の後半から再スタートしたトレーニングは、一言で言えば「ひたすらがまん」。何をがまんするかというと、効果が出るまで「がまん」する。やってもやっても速くならない自分に言い聞かせた、いつか効果が出るはずだと。

 最初に光明を見出したのはスイムだった。疲れずに長く泳ぐためツービートクロールをマスターし、プルブイを使ったストローク練習を続けた。これで距離には対応できた。あとはスピードで、試行錯誤の結果、「速く」長く泳ぐには、フォームを改善することが効果的であることがわかり、現在もフォームの改善と定着を目的に練習を続けている。効果は確実に出ている。

 バイクは、もともとただの軟弱系ツーリング派だったので、パワーが足りない。体重は軽いのでヒルクライムは得意なのだが(それでも遅いが)、平地の高速巡行が続かない。この欠点を補強するために、Zwiftという超有用なツールで高負荷トレーニングをしているのだが、成果に結びつかない。

 ある意味、諦めてもいる。それでもレースの制限時間にひっかかることはないレベルなので、Zwiftと実車のヒルクライムでトレーニングを続けていれば、まぁ大丈夫、とアバウトに考えている。実車では秩父の峠トレが実に楽しくて。ま、それでいいんじゃないかな、と。

 最も「がまん」を強いられるのがラン。走っても走っても速くならない。ゆっくり長く走ることはできるのだが、スピードを出すと続かない。言い訳にはしたくないが「トシのせい」かと諦めかけていたが、スイムのフォーム改善をヒントに、ランニングフォームの見直しを思い付き、ネットで調べてフォームの改善を行ってみた。

 根本的にフォームを変えた。いわゆる「蹴り足」「漕ぎ足」を「引き足」に変え、同時に前傾と高重心を意識し、腕振りも体の後ろで引く方法に変えた。これで走りが変わった。走りが軽くなったのだ。
 この走りに光明を見出し、練習を重ねている。結果も出だした。あまり悲惨な結果にはならないと思う。自信はついた。


 以上、60代でも創意と工夫と改善で、無理矢理感もあるが「伸びしろ」を創出して楽しんでいる。「創意と工夫と改善」を常に考えながらトレーニングする、これが実にハマるんだな。奥が深いし。

 トレーニングは、根性や精神論とは無縁の、「目標を達成するためのプロジェクト管理」のもと、自分の心と体を相手にPDCAを回しながら実行している。トライアスロンを行うということは、このプロジェクトの遂行を楽しむことだ。だから面白い。

 耐久競技だから肉体的な苦痛が生じる。苦痛の原因と対策を考える。どうすればその苦痛の発生を減らすことができるのか。それをトレーニングで実現していく。方法はいろいろある。しかも3種目ある。それぞれ特性が違う。得意不得意もある。

 トレーニングはただ闇雲にやればいいというものではない。肉体は鍛えてから休息をとることで回復する。その繰り返しで強化される。したがって、トレーニングは休息と組み合わせて考える。もちろん、食事から摂る栄養、回復させる睡眠もトレーニングと同等に重要になる。

 これらをすべてコントロールしながら目標を実現させていく。なので「プロジェクト管理」が必要となる。プロジェクトをマネージしながら、プレーヤーとしてパフォームする。これが楽しく面白い。だからハマる。そういうワケだ。

 もちろん、この背景にはがんの存在がある。有限の時間を精一杯使う。有意義に使う。効果効率を重視して目標を実現する。無駄な時間はない、命は有限なのだから。これが強いモチベーションになっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?