ヒハマタノボリクリカエス 4
サイトの中を徘徊した。友達募集は圧倒的に男が多い。出会い系と勘違いしているのかな。女性の書き込みがあると安心する。
そして、みんなひとりだなっていうことに気付いた。だからこうやってここで仲間を求めている。確かに私も孤独だ。この中に、私を理解してくれる人はいるのだろうか。少なくとも学校にはいない。私は誰にもメッセージは送らず、多くの参加者のページを訪れた。
最初は、これが同じ日本人だとは信じられなかった。
私のしらない世界があった。
雑誌の中の世界でしかなかったリスカ、アムカ、タトゥー、ボディピアス、クスリ。ある人の所には自身のピアス写真が載せられていた。どれもマトモな所にはついておらず、見ていて吐きそうになった。
他人のページを覗くのをやめ、メールがきているか確認をした。案の定、私が書き込みをしたあとすぐに反応があったみたい。大量のメール。開けずにすぐに削除する。そしてすぐに覗き見を再開した。
二時間はさ迷っただろうか。
興味の湧く人物にたどりついた。
ハンドルネームは「タカシ」本名は非公表。年齢は私と同じ。職業は高校生。顔写真は載せていない。住んでいる所は私の学校のすぐ近く。彼は精神障害を公表し、日記を書いていた。
そのタカシの日記を最新のものから読み始めた。
この人も、私が生きてきた世界とは違う世界で生きている。
普通の高校生として生活を送りながら、彼は絵を描いて載せていた。その作品を見てみたけれど、そういう系にはうとい私でも、かっこいいって思えた。実際かなりかっこいいし、うん。
同じ年齢で凄い。
それに対して、私ときたら、自慢できるものなんて何もないし。
ああ、本当にないよ。
何も。
絵なんて描かないけれど、とても人にみせられたものじゃないし。
彼は風景画が好きみたいだ。道端の名もない花。
夕日がかかる寂れた公園。
作品を発表するのと同じく、彼は様々な苦悩を正直に告白している。将来は画家として食べていきたいという願望と、それの葛藤。そんな彼に沢山の温かい言葉がかけられている。
そうだよ、大丈夫だよ、すごくうまいよ。すごく頑張っているよ。
私はコメントを残した。
「はじめまして。作品勝手ながら拝見させていただきました。めちゃくちゃいいですよ。本当に、うんすごくうまいです。私なんて絵描けないから尊敬します。年も同じなのに凄いなって思います。私も鬱に最近なってしまって、苦しいのがわかります」
返信なんて期待しない。
ただ、私は彼を肯定したかっただけだ。
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